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夏休みも後半にさしかかり、陸は宿題に追われていた。 昨晩も遅くまで計算ドリルをしていて、起きてきた頃にはすっかり昼近くだった。 「おはようございます、陸」 台所からカイトが姿を見せる。 カイトの好奇心も落ち着き始め、今ではすっかり家事をこなすまでになっていた。 今日も早起きをして他の家事をしつつ、陸が起きてくるのを待っていたのだ。 「カイト~今日はオムレツがいいな~」 「はい、お待ちくださいね」 コンコン、と軽やかに卵を割り、さっそく溶き始める。 安売りしていたという薄いピンクのエプロンが、なぜだかカイトにとてもなじんでいた。 まるで保父さんみたい、というのが家人2人の意見だ。 「も~昼かぁ~。…カイト、じいちゃんは?」 「渡海プロフェッサーならお出かけになられてますよ。なんでもお客さんが来るとか…」 「まじで。やべ。先にちょっと着替えてくるよ」 「はい。その間に焼いておきますね」 タタタ…。 陸が足早に部屋へ戻り、ちょうどオムレツが焼きあがる頃、来訪を告げるチャイムが鳴った。 「はーい」 エプロンを外しつつ、カイトは玄関へ向かう。 もしかしたらあのお客さんかもしれない。 そう思い、少し緊張気味に扉を開いた。 「お帰りなさい、プロフェッサー……あれ」 「おかしいわね。ここは私の家じゃないんだけど」 カイトより少し背が小さいがスタイルのいい、栗色の短髪の女性がそこに立っていた。 ちなみに彼女一人である。 「あの、どなた様でしょうか?」 「そういうあんたこそ、人の家で何してるの。ここは明さんの家でしょう」 「あ、あきらさん…!?」 確か渡海プロフェッサーのファーストネームは明、だ。 人間は近しい関係の人を呼ぶときに使ったりする。 ということはこの女性は渡海プロフェッサーの知り合い、いや、もしかしたらすごく親しい人なのかも! でもでも、この女性はどうみても20代だ。 渡海プロフェッサーの奥様はすでに亡くなられていて、陸の父親にあたる息子さんのお嫁さんもすでに30後半だっていうし。 ということは、ということはである。 この人はプロフェッサーの、こ、こ、こ、…! 「どうしたの? 口開けたまま固まっちゃって」 「あ、あの! あなたはも、もしかして渡海プロフェッサーの」 「おお!メイコ!やっぱり家に来てたか!」 「明さん!」 ぜえぜえ、と息をきらせて明が帰ってきた。 ちなみに彼一人である。 「あの、プロフェッサー、お客様は…?」 「ああ? 彼女がそうだ。迎えに行くと言ったんだが、先にうちに来てしまったらしい」 「私は明さんのうちまで行くといったからいいのに。心配性なんだから」 ほほを少し赤らめて、親しげに話す二人を呆然と見つめるカイトは、先ほどの考えが再びよぎる。 この人は、まさか渡海プロフェッサーの恋人なんじゃぁ……! 「一人にしておくと何かと危ないだろう、お前さんは・・・。とにかくあがっとくれ。ちなみに! 家のものに触るんじゃないぞ、メイコ!」 「いやだわ、明さんてば」 「あ、スリッパをどうぞ」 メイコ、という女性をリビングへ案内しつつも、カイトの頭の中は『歳の差婚』の文字が浮かんで消えなかった。 どうしよう、陸はまだ12歳だし、ショックをうけるんじゃないだろうか。 いや、そうに違いない。 第一、歳の差婚は「ザイサン目当て」っていうし! カイトの思考回路はそこで決定し、二人の仲を陸のために引き離す使命に火がついてしまっていた。 「カイト、お茶を淹れてくれ」 「は、はい」 「私はワンカップね」 「お前さんはまた! いーから、二人とも茶でいいぞ」 「は、はぁ…」 カイトは言われるままに茶を淹れたが、昼間からお酒を要求する女性なんて!と怒りに燃えた。 こういうときはあれだ、昼ドラのOLがお茶を淹れるときにやっていたことを実践して相手を怒らせれば別れるんじゃ!? そんなことを考え、カイトは思いつく限りのいやがらせを茶に込めることにした。 「ど、どうぞ」 二人分の茶を置き、ハラハラと行く末を見守る。 なんでもないような会話を続ける二人だが、すぐにその機会が訪れる。 メイコが茶を持った。 よし!これで渡海家の未来は守られ―― 「え! 何、じいちゃんお客さんって女の人!?」 しまった! カイトはここで重大なミスに気がついた。 陸がリビングに戻ってきてしまったのだ。 すっかり身なりを整え終わっている。 「ああ、やっときたな。改めて紹介する。この人は――」 さあ、とカイトの顔が青ざめた。 もう終わりだ。どうやって陸をなぐさめよう? いや、それよりも二人をなんとか別れさえる方法をあの占い師にでも鑑定してもらおうか。 「カイトの姉にあたる、MEIKO。ボーカロイドのメイコじゃ」 「へ?」 「うっわー。きれいなおねえさん、ボクじいちゃんの孫の陸。よろしく」 「あら、愛想のいい子供は大好きよ? メイコさん、って呼んでね」 陸とメイコはすっかり打ち解けて握手などをしている。 その場に凍りついたカイトは、目が点になったまま微動だにしなかった。 「どうしたカイト?」 明がたまらず声をかける。 「プロフェッサー、僕に姉って…」 「いっとらんかったか? 今日おまえさんの姉を連れてくるって」 「お客さんとしか聞いてません!」 「変なやつだなー。そんな怒ることないだろう?」 カイトの不審な態度に首をかしげつつも、明はメイコをカイトの前へ立たせる。 「これがお前の姉、メイコ。で、メイコ、これがお前の弟にあたるカイトだ」 ふーん。と、つぶやいて、メイコは品定めをするように頭から足元までカイトを見回す。 とりあえず、カイトは動揺を隠しつつ改めて挨拶をした。 「あ、あの、は、はじめまして」 カイトがそう言うと、メイコはふうとため息をついた。 「なんだ、女の子じゃないの?」 予想だにしなかった展開に、カイトの笑顔が固まる。 後ろで聞いていた陸も、閉口したようだ。 「女性型の次は男性型だって言っただろーが」 「だってぇ、可愛いほうがいいじゃない?」 明の言葉もむなしく、カイトの心には何故かさみしい風が吹いていた。 「す、すみません、僕男で・・・」 先ほどまでの自分の考え違いも手伝ってか、カイトはうなだれた。 「あ、でも」 つい、とカイトのあごをメイコは指で持ち上げる。 「よっくみるとあなたも可愛いじゃない?っていうか可愛い弟なんだし、仲良くしましょ」 仲良くしましょ、という言葉に、カイトは心底安心した。 思ったよりいい人そうだ。そもそも自分の勝手な妄想だったわけだが。 「よ、よかった。メイコさんいい人で」 胸を撫で下ろして、思わず考えたことを口にしてしまう。 「まぁねー」 「えへへ」 よかった、今度、おねえさんって呼んでみようかな。なんてカイトが考えていると、メイコはこう言い放った。 「じゃ、ワンカップ買ってこい」 「え!?」 「あんた、これ、私に飲まそうとしてたでしょ? …殺すわよ」 パキン!と、茶器がメイコの手の中で砕けた。 割れたのではなく、粉々に砕けたのだ。 カイトが今までに見たことのない全力疾走でスーパーまで買いに行ったのは言うまでもない。 「やっぱりメイコの性格設定間違えたかー」 「じいちゃん…」 こうして。 姉と弟のファーストコンタクトは、姉>弟という立場を見事に決定したのであった。 すっかり日も暮れた頃。 「ところで、メイコさんはどうしてうちにきたの?」 陸は晩御飯ができるのを待ちながら、ソファでくつろぐメイコに尋ねた。 「メンテナンスのためよ。一週間ぐらいここに泊まるわ」 その直後、台所から皿の割れる音が響いた。 「可愛い弟の調教、じゃなかった、調整につきあってやらないとね」 ニヤリ、とメイコは笑った。 カイトの受難はまだまだ続く。 前へ 目次 次へ というわけでメイコさん登場です。 なんかカイトが痛い子でメイコさんが最強でごめんなさい(汗) 第一印象が悪かっただけで、きっと二人は仲良くなるよ、きっと! ちなみにカイトは陸が勉強中のときにテレビばっかみてました。 その影響でちょっとお馬鹿さんです。だけどこれからカイトメインになっていくので 成長っぷりに乞うご期待です! では、最後まで読んでいただき感謝感謝です!
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「…あんた!いい加減起きなさいよ!!」 「……」 …あと5分だけ…… 「…いいから早く起きなさいってばぁー!!」 ドカッ 「アッー!!」 腹にこれまで体感したことがないほどの衝撃が走り、俺は悶絶した。胃液が逆流する!! 「ぐぇぇ……」 幸いなことに、昨日の夕飯は消化しきれていたらしく、それほど布団への被害は出さずに済んだ。 「やっと起きたわね。おはよ。」 「おはよ、じゃないよ……なんで朝からこんな目に会わなきゃいけないのさ……」 「あんたがなかなか起きないからよ。」 「…そうじゃなくてさ。なんで小鳥遊がここにいるのか聞いてるの。」 そう。何故か今朝は奈々乃ではなく、小鳥遊が起こしにきていた。そして何故か馬乗りの体勢だった。まてよ、でも、一体どこから…… 「なんでって、お隣同士だからよ。これくらい全然問題ないでしょ?」 小鳥遊が指差す先には、開け放たれた窓から朝日が差し込んでいた。…まさかここから入ってきたのか……凄い行動力だな。 すると、食堂のある1階から足音が聞こえてきた。俺は戦慄した。とてつもなくいやな予感が頭をよぎる。 ガチャ ドアが開くと、奈々乃は心配そうに部屋を覗いた。 「…兄さん?今の音は―」 奈々乃は言葉を失い、立ち尽くしている。…えっと、これはもしかして朝からピンチかね?俺と小鳥遊が朝から俺の部屋に二人きりでいる時点で既に問題だけど、まして今の体勢は…… 「二人とも!!何やってるんですか!!!」 第3話《その名は監督生》 「お前も大変だな、山根岸…」 「心が折れそうだ……」 その後、当然彼女たちは口論となり、俺はそれに付き合わされることとなった。電車に乗るとボブがいたせいか、二人ともおとなしくなった。 「気の毒なお前に、俺の愛をぶちまけてやろう……」 「結構です。」 「そうキッパリ言うなよ…やろうぜ相棒。」 二人ともいい具合にボブを見て引いているな。特に小鳥遊は初対面だ。このインパクトは大きいはず…… 俺はボブの話に付き合い、どうにか二人のテンションを抑えつつ、学園へと向かった。 そして昼休み、俺は昼食を終えて教室でくつろいでいると突然、元武に呼び出された。元武についていくと、先に大堂が待っていた。どうやらこいつも呼ばれていたらしい。 「二人とも!!俺の話を聞いてくれ!!」 「えっ?あ…うん。」 …今日の元武はやけに興奮気味だな。何かあったのだろうか? 「俺は最近の校内の風紀の乱れに、我慢がならない!!」 「…はぁ。」 「…それで?」 元武は一拍置き、俺たちは傾注した。 「…そこで俺は、この学園に監督生部を設立したいと思う。」 「なんだそりゃ?山根岸、聞いたことあるか?」 「いや…」 とは言ったものの、俺はその単語、どこかで聞いたことがあるような気がしていた。…いや、やっぱり気のせいか。 「俺は先週、ある映画を見た。内容は、主人公の3人組みが学校の治安維持のためにかり出され、風紀の改善に向かってあれこれ活動するという感動的なものだった。その主人公たちの役職名こそが、“監督生”だ。俺はそれを部活の形でやってみたい。だが、そのためにはお前たちの協力が是非とも必要だ。頼む!俺に力を貸してくれ!!」 また厄介事を……俺は大堂とこいつを説得しようと思ったが、大堂の様子を見る限り、こいつまでやる気らしい。……仕方ないね。 「…わかったよ。協力する。」 「本当か!?感謝するぞ山根岸!!では、早速今日の放課後から活動開始だ!!」 ―《監督生》の称号を手に入れた― 「……では結局、この状態では部として成立しないと?」 「当たり前だ。お前ら、高三にもなってそんなこともしらねぇとは、終わってるよ!!」 放課後、俺たちは顧問となる教師を探すべく、鎮圧者に相談したのだが…どうやら俺たちは大きな勘違いをしていたらしい。鎮圧者の話によれば、部を発足するには最低五人の生徒が必要で、五人そろった上で初めて顧問がつけられるらしい。つまり、俺と元武、大堂の三人では監督生として活動することはおろか、そもそも部を立ち上げることが出来ないというわけ。 「……高島先生殿!俺の熱意は本物なんです!!是非俺たちに“監督生”をやらせてはいただけませんか!!!」 「ムリなもんはムリだ。元武、これは学園の“規則”だからな。」 「…ッ!」 規則という言葉を持ち出され、元武は苦悶の表情を浮かべた。……まぁ、こればっかりはどうしようもないかな。こんな部にあと二人も集めるなんて、どうがんばっても…… 「……あっ」 「…どうした山根岸?」 「いるよ。あと二人、付き合ってくれそうなやつが……」 「それは本当か!!先生、あと少しだけ待ってください!!」 「……わかった。さっさと呼んで来い。」 俺は二人がまだ校内にいることを祈りつつ、二人を探しに向かった。 数分後、俺はなんとか奈々乃と小鳥遊を捕まえ、元武、大堂とともに鎮圧者に再度掛け合った。まぁ、彼女たちには悪いが、事後承諾という形をとらせてもらうか。 鎮圧者との交渉は思いの外スムーズに進んだ。この調子なら、納得してもらえるだろう。元武も喜んでいるみたいだし、二人を呼んできたかいがあったな。 「…ところで、今連れてこられた二人、山根岸の妹ともう一人、名前は確か、小鳥遊だったか。お前ら、もう監督生部については聞いてるのか?」 …どうやら、鎮圧者は一筋縄でいく相手じゃなかったらしい。これは、もう、終わったな。元武にはあきらめてもらうしかなさそうだ……案の定、2人は怪訝そうな顔をして俺を睨んでいた。一応説明してみるか… 「…二人とも、落ち着いて聞いてくれ。俺たちは、新しい部活として、監督生部を立ち上げようと思うんだ。でもそのためには最低五人のメンバーがどうしても必要でさ。二人に来てもらったのは、そのためで……」 俺がそこまで話したところで、小鳥遊が凄い剣幕で迫ってきた。まぁ、誰だって怒るよな…事情も話さず呼びつけて、その上理由が数合わせだなんて…… 「た、小鳥遊、ごめんなさ―」 「おもしろそうじゃない!乗ったわその話!!」 「…へっ?」 …いまこいつ、なんて? 「…あら?三人ともなんでかたまってるのよ?あたしも参加するって言ってるの!」 「あ、あぁ。ありがとう小鳥遊。正直、お前が参加してくれるとは思わなかったよ。」 「ま、あのときの借りはこれで返したわよ。」 これで四人か…奈々乃は― 「わ、私も参加しますっ!!」 どうやら相当乗り気らしいな。ふぅ…人数の件はこれで解決か。あとは鎮圧者次第だな。 「高島先生殿!!五人、集結しました!!」 「…仕方ない。あんまり乗り気じゃないんだがな、顧問、任されてやるよ。」 「ありがたき幸せ!!」 「ま、トラブルだけは起こすなよ!」 かくして、俺たちの監督生部は発足した。 翌日、放課後に俺たち監督生部の面々は、部室として与えられた第一会議室に集まった。無駄に広いな…… 「ここが我々の拠点となる場所か。」 「…無駄に広いわね。」 「広いに越したことはないよ。なぁ、兄貴?」 「あぁ。」 確かに、部室としては申し分ない。冷暖房完備、一年中快適に過ごせそうだ。 「よし!では、これより第一回目の監督生部の活動を開始する!!以後は、部長である俺の指示に従ってもらうぞ。よろしく頼む!」 ずいぶん偉そうな口上だったが、元武が言うと不思議と腹は立たなかった。やっぱり貫禄というかオーラというか…そんな何かが備わっているんだろうな。 俺が感心していると、突如として部室のドアが開いた。一体誰が? ドアの向こうには、見慣れない生徒が立っていた。その他にも数名の取り巻きらしき生徒が見える。…あの人は確か― 「貴様!俺たちに何の用だ!!」 突然、元武が彼らに向かって叫んだ。こめかみに血管が浮かんでいる。元武はこいつらを知っているのか? 「元武、この人たちは?」 「…こいつらは生徒会の連中だ。自らの意にそぐわない者はどんなに汚い手を使ってでも徹底的に排除する、そんなやり口で今の独裁体制を保ってきた。ダニのようなやつらだ……」 「フッ…ダニのようなやつらとは、ずいぶんとご挨拶だね。元武コウくん?いかにも。僕たちは生徒会の人間さ。そして、僕が生徒会長の高林カツだ。」 高林 カツ…聞いたことがある。確か前の生徒会長を汚職の噂を流して失脚させ、副会長から会長にのし上がったという、いわくつきの生徒会長だ。会長になった後も、悪い噂が絶えることはなく、なりふり構わないダーティープレイで反対する勢力を潰しているらしい。でも、その生徒会長が俺たちに何の用だ?まだこれといった問題は起こしていないはずだが…… 「…単刀直入に言おう。キミたちの発足した監督生部、生徒会としてはその存在を許すわけにはいかないんだよ。」 …どういうことだ? 「何故だ!?」 「理由は簡単さ。まず部長がキミ、元武くんだからだよ。キミは過去に何度も暴力事件を起こした問題児だ。それも最悪のね。もうひとつの理由は、部の活動目的がまるで分からないことさ。問題児の作った目的不明の団体。これだけ理由がそろえば生徒会としては活動停止にするしかないのさ。そうだろう?」 「…貴様!!」 我慢の限界だったのか、元武は俺たちが止めるまもなく高橋にとびかかった。だが、すぐに控えていた数名の生徒に取り押さえられてしまった。 「暴力はごめんだよ。元武くん。やっぱりキミたちは危険らしい。近いうち、部の登録は抹消しておくよ。じゃ、ごきげんよう。」 俺たちが唖然とする中、生徒会のメンバーは部室を後にした。 To Be Continued 《次回予告》 監督生部は早速大ピンチ あいつはあいつでずっと妹とべったりでしょ!? あたしのことにはちっとも気付いてないみたいだし… ホント、ついてないわね…… 次回、『山根岸名人の冒険島』第4話 《恐怖!監督生殲滅命令》見てくれないと、暴れちゃうから!
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400 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 08 01.63 ID 0ysqbgf1 [2/11] ――僕が階下のドアを開けると、そこは1階とは全く違う世界だった。 ふたり分の椅子。 ふたり分の食器。 ふたり分のティーセット。 それを載せる少し小さめのテーブル、そして暖かな光を放つランプ。 そう、まるで僕が好きだった本の中にありそうな部屋だった。 この風景を一言で表すなら 安堵。 今にも不思議の住民がお茶会でもはじめそうな………そんな雰囲気だった。 そして、その世界の中心にいるのがアリス。 椅子に腰掛け、テーブルに向かいながら僕のプレゼントしたアームレットを、 微笑みながら見つめている。 僕は、一番会いたかった人に対して、一番違和感を感じた。 変わってないのだ。 その仕草も、身に纏う空気も、姿形も全て。 僕の記憶のままのアリスだった。 本当に5年経ったのか? 実は今までのはすごく悪い夢で、起きたらあの日から一日しか経ってないんじゃないのか? そう、思わざるをえないほどに彼女は変わっていなかった。 しかし、自分の姿を見ると5年の歳月を感じる。 身長は伸び、声は変わりはじめ、着ている服は少年より、青年を感じさせるような服を選び始めている。 ――やはり、僕は死ぬのかな。 時間の残酷さを噛みしめつつ、一歩彼女の元へ歩み寄った。 401 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 08 30.93 ID 0ysqbgf1 [3/11] 「動くな。」 低く、鋭く、冷たい声がぼくに突き刺さる。 聞き覚えのある、でも聞き覚えのない声。 目の前の少女を見る。 微笑みながら、アームレットをじっと眺めている。 ……馬鹿な、今の声がアリスだっていうのか!? 現実を受け入れられない僕に、アリスはさらに追い打ちをかける。 「貴様がどこの誰かは知らん。興味もない。 だが、今すぐここから出て行け。 ここは私と、彼のためだけの世界だ。」 声が、出ない。体も、動かない。 彼って誰だ? 待ってくれていたのは僕じゃないのか? 僕は、もう友達じゃないのか…? 体のバランスが崩れ、ふらっ…と足が前に出そうになる。 次の瞬間、僕の体は完全に固まった。 アリスが何か僕を縛り付けたわけではない。 ただ、周りが灰色に見えるほどの殺意を僕にぶつけただけだ。 「それ以上…土足で私と彼の世界に踏み込むな…… ここは血で汚したくない。今すぐ出て行け。今すぐにだ。 この無礼は今出て行くなら、目をつぶってやる。」 表情は、さっきからずっと変わっていない。 世界にひとつだけの宝を眺めているかのように、僕の作ったアームレットを微笑みながら見ている。 しかし、その瞳は透き通った青から、紫…そして燃えるような赤に変わっていっている。 僕は、動かない。動けない。 怖かった。 目の前の少女が、とても怖かった。 その無遠慮な殺意が。上の部屋の惨状が。そしてこれから起こるであろう無惨な死が。 そして、悲しかった。 彼女が僕を友達だと認識してくれず、ただの邪魔者だと思われていることが。 402 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 09 08.49 ID 0ysqbgf1 [4/11] スッと、アリスが立ち上がった。 ゆっくりとこっちに向かってきている。 「出て行かないなら、それでもいい。 ただし、もう外に生きて出られると思うな。 …上に行こうか。何度も言うけど、この部屋を血で汚したくないんだ。」 アリスが僕の前に立つ。 先程まで微笑んでいた顔が、一気に殺意にまみれた。 瞳は燃えるように赤く、深い色をたたえていた。 僕だよ、アリス。君の…友達だよ…… 「ア…リス……」 絞った声はか細く、相手に伝わるかすら怪しい声だった。 しかし、僕の声はアリスに伝わったらしい。 殺意が消え、アリスの瞳は青く戻った。 「君…か…?」 アリスが優しく、僕の頬に手をかける。 「アリス…僕だ…アリスの友達の…僕だ……」 目の前のアリスが、僕に柔らかに微笑む。 「君だったのか…すっかり背が伸びたんだな。違う人かと思ってしまったよ。」 「…違う人だったら?」 アリスが僕の頬を撫でることをやめ、代わりに僕の手を取る。 「ここは世界を閉じているから、君以外滅多に入れないんだが… 邪魔者は、排除するだけ…かな?」 背中がゾクっとした。 それはつまり、僕以外の訪問者の人生の終点を表している。 具体的な方法はわからない。 しかし、その終点は全て等しく、ここで終わっていることだろう。 「今日も何かして遊ぼうか?それとも、私の知っている昔話でもしようか?」 僕の恐怖も露知らず、あの時のままのアリスは、 あの時のままに僕を誘う。 「アリス、少し、話そう。」 対する僕は、あの頃の僕と違っていた。 アリスに、恐怖を覚えていた。 「そうか、ならお茶を淹れよう。すこしそっちへ座っていてくれないか?」 「うん、わかった。」 アリスに…聞かなくちゃ…… 403 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 10 45.69 ID 0ysqbgf1 [5/11] 「君が隣…君がいる…ふふっ……」 なぜか、僕はベッドに腰掛けていた。 てっきり椅子かと思ったんだが、椅子ではダメな理由がある。いや、あった。 「アリス、お茶が飲みにくいんだけど……」 アリスが、僕を横から抱きしめているのだ。 「君のぬくもり…君の匂い…君の声…君がいる……私の隣にいる……私の………」 アリスは僕の体にすりつき、顔を胸にうずめている。 ちょうど顔が見えない…今どんな表情をしているんだろう…… やがて飲みにくい体勢のまま紅茶を全て飲み、心が落ち着いたところでアリスに話しかけた。 ちなみに、まだ僕の胸に顔をうずめている。 「アリス、僕は君に聞きたいことがあるんだ。」 「ん………何かな?」 僕が話しかけると、ゆっくりと体を僕から話し、僕の目を見た。 目は少しとろけたような感じで、頬は上気している。 「アリス、君はまだ封印が解けてないのかい?」 「…またその話か、もう封印はない。私は既に力を取り戻している。」 またか、というような顔をして、再度僕の胸に顔をうずめようとする。 僕は彼女の肩をつかんだ。 「前に君は、ここから離れられないといった。どういうことだか教えて欲しい。」 あの時、僕は嫌われているという想いだけでいっぱいだった。 でも今は違う。アリスだって何も理由がなくあんなことを言うはずがない。 …根拠はないんだけどね。 アリスの目を見る。 先ほどと打って変わって、少し目が泳いでいる。 「あの…それは…私は…つまり……」 …なんで動揺しているんだ。まさか、そんな…… 嘘だろ?アリス? 「アリス!僕の質問に応えて欲しいんだ!」 このままだと僕は君との友情を疑ってしまう! 嫌だ!やっぱり嫌なんだ! 頼む…本当のことを教えてくれ… 「わ…私は、君とけ契約、した。」 契約?契約ってなんだ?何を契約したっていうんだ? つかんだアリスの肩が震える。熱くなって強く掴んでしまったか… 僕は手を離した。するとアリスは自分を抱くように腕を組んで震え始めた。 404 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 11 20.80 ID 0ysqbgf1 [6/11] 「き、君はここにきて、私と話し、私と遊んでくれる関係を望んでくれた。 だから私は、この蔵から出ない、出られられない。 も、もしかしてあの時私が断ったことが気に食わなかったのか? す、すまなかった。あんなことになるなら、私は安易な契約なんてするべきじゃなかった。 でも許してくれるなら、私は君になんでもする!本当だ! なんでも、なんでもしますから……許してください……お願い…します……」 アリスは僕の目をすがる様に見る。まるで命乞いをされているかのような気持ちだった。 冷静に考えればここで追求をやめるべきだった。 僕の発言がどれだけアリスを追い込んでいるか考えるべきだった。 だが、僕は止められなかった。 僕の知らないところで話が進んでいるのが、 何より僕の知らないアリスがいるのを許せなかった。 「僕は君と契約した覚えはない!」 あの時、僕は何も望んでいなかったはずだ!一体どういう…… 「う…そ…だ………」 ハッとなってアリスを見る。 目が見開き、瞳から涙が溢れている。その視線の先は僕を通り過ぎ、虚空を見つめていた。 …泣いている。僕が、泣かせたのか? 「嘘だ…嘘だって言って…… わ…私と友達になるって、言ってくれたじゃないか……… そ、その言葉を信じて私はけ、契約したんだ… この関係、っがかっ変わらないように…… いいいつまでも、続くように…… 嘘だよね?嘘だよね?私は望まれたんだよね? 私はここにいるべきなんだよね?そうなんだよね?」 もしかして、僕の「トモダチになってください」という言葉が、彼女との契約になっているのか? …だとしたら、安易な発言をしていたのは僕の方じゃないか…っ!くそっ! 「ごめん…僕の安易な言葉から、君を縛り付けるようなことをしてしまって… それなのに…ずっと一人にしてしまって……本当に……ごめん…」 「ち、違う…違う……わ…私は君が望むなら、死んでも……いい。君が必要としてくれるなら……」 「僕には君が必要だった。ずっと、君に会いたかった……」 「私も…私も君に会いたかったっ!一緒に居たかった!ずっと会いたかった! ……うぅ……うぇぇぇぇん……」 僕は、彼女が泣き止むまで、あのときのように彼女を抱きしめた。 405 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 12 17.57 ID 0ysqbgf1 [7/11] 「アリス、君に渡したいものがあったんだ。」 ゴソゴソと、自分の手提げかばんを漁る。 「今年の秋、一番に落ちた紅葉なんだ。 ……本当なら、仲直りのきっかけに君を紅葉狩りに誘おうとも思っていたんだけど…」 「…ありがとう。君の気持ちだけでも十分に嬉しい……」 そういうと、アリスは紅葉を胸に抱いて、そっとテーブルに飾った。 飾られた紅葉は、僕が持ってきた時よりやけに瑞々しい気がする…… 紅葉に気を取られていると、アリスが僕の両手を握ってきた。 「もう…どこにも行かないんだよな? あの日のように、ずっと一緒に遊ぼう。 私と君はトモダチだ……トモダチなんだ……」 アリスは僕の目を見ない。ずっと、僕の手をみている。 ……どうしよう、お別れを言いに来たんだけど、とっても言いづらい雰囲気になってしまった……… しかしさりとて、僕の死が消えてしまうわけじゃない。 心を鬼にしよう。僕は最低の悪魔だ。 「違う、アリス、僕は……君にお別れを言いに来たんだ。」 アリスがキッと僕の目を見上げる。目から涙がこぼれている。 「まだ…まだそんなことを私に言うのか!?私の心を壊して何が楽しい!? 私が死ぬほど喜んで、私が死にたいほど悲しむのが滑稽か!?」 ポロポロと涙を零す。僕は人でなしだ。本当に、最低だ。 「……そうだよ、だから僕は君に言うんだ。 もう、トモダチを止めに来た…ってね!」 アリスは俯いた。ブツブツと何かをささやいているようだ。 構わず、僕は続ける。 「僕はこれから遠くへ行く。もう、君とは会わない。 今日ここへ来たのは、君にお別れを云うためだ。 君も僕のことを忘れてくれ。僕も、君を……忘れる。」 ははは、死にたいな。出来れば苦しむように死にたい。 友達を何年も放っておいて、挙句の果てに忘れろとか、 僕は人間じゃないな。外道っていうんだっけ、こういう奴は。 「……を……きする。」 今、なんて言った? 「…え?」 「契約を、破棄する。」 冷たく、鋭い声が、厳かに響いた。 406 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 12 53.83 ID 0ysqbgf1 [8/11] 「と、友達をやめるっていうこと?都合がいい、なら僕はもう……」 「勘違いするな、人間。」 「な、なにを………」 アリスから放たれるのは圧倒的な威圧感。 言葉が出ない。全て呼吸となって外へ出て行く。 「もう、君との関係をずっと大事にしていくのは辞めだ。 もはや私は自由にする。君の指図は受けない。」 アリスの顔が見えない。頬が光っている。 ……泣いているのか? 「私は君を待っていた。君がまた私のところに来て、 他愛も無い話をして、星を見たり、かくれんぼをしたり、本を読んだり、 風にあたったり、少し一緒に寝たり…… だが、君は私から離れていく。私に忘れろという。 ………こんなに悲しい気持ちになるなら、 君が離れていくのをただ見ているのがトモダチだというなら……」 アリスが僕の手を振り切り、部屋の前に立つ。 僕を見る。 真夏の青空のような、真っ青の瞳に、涙をたたえて僕を見る。 「…私は、トモダチなんて要らないっ!!」 部屋が、シン…と静まり返った。 何も動くものがない部屋、静かにアリスと僕の息だけが聞こえる。 終わった…終わった……… もう、目の前の少女は僕の友達ではない。 ただの、可憐な少女だ。僕とは一切関係がない。 もう、思い残すこともない。 ……帰ろう。 407 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 13 41.88 ID 0ysqbgf1 [9/11] ベッドから立ち上がり、部屋から出ていこうとすると、 カタカタと、飲み終えた紅茶のカップが震えた。 その音はすこしずつ大きくなり、やがてカップが地面に落ちた。 なんだ?なんだってんだ? アリスは大丈夫なのか? アリスを見ると、足元に暗闇が広がっていた。 アリスの目が、赤い。 やがて暗闇がアリスを襲った。まるでその暗闇に引きこむように。 僕はとっさにアリスに手を伸ばす。 「アリス!」 あと少しで届く!待ってろアリス! 手が触れ合う瞬間、 ペシっという音と共に手を払われた。 …アリスに。 「なっ…!アリス今は……」 「来るな、早く逃げろ。」 ひんやりとした声で、自分に言う。ど、どういう事だ? 「これは契約違反したものを罰するための呪い。 ……だが、こんなものはどうでもいい。なんとでもなる。 だが、お前が今まで縋っていたトモダチとやらの関係を大事にしたいなら、 今すぐここから出て行くがいい。一刻も早く蔵から離れるがいい。 さもないと私はお前を……」 ――食べちゃうかもしれない。 408 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU [sage] 投稿日:2011/04/12(火) 01 14 01.87 ID 0ysqbgf1 [10/11] 僕は全力で走った。 だが、それはアリスとの友達の関係を守りたいためじゃない。 純粋に怖かったのだ。 もう、あれはアリスじゃない。 そうだ、あれは……レッドアイズだ。 つまづきながらも階段を上り、タルの並ぶ貯蔵庫を抜ける。 途中、激しい振動が自分を包む。振動に耐えかね、周りのタルからはお酒が溢れ出す。 それでも走る。走る。 足元の液体に滑っても、なお走る。 出口はもう目の前…あと少し…届く……っ! 「…惜しかったな?実に、惜しかった。」 ドアまで後数歩、僕の肩には アリス…いや、レッドアイズが乗っていた。
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気がつけば、真っ暗で明かりのない道をひたすらに歩いていた。 俺は、いつからこうしていたんだ。 体の節々が痛む。出口はどこだ? 敵は? そんな簡単な疑問に答えてくれる人さえ、俺の周りにはもう誰一人残っていない。 どこまでいけばいいんだ。 本当にこちらの道でよかったのか。 他にも道はたくさんあった。 少しだけこっちの道を選んだことを後悔したけど、ここまで来てしまったのなら、今更戻ることはできない。 もう通り過ぎてしまったのだからと諦めるしかない。 あとどれだけ歩けば、暖かい世界にたどり着けるんだろう。 そんな場所があるんだろうか。こうやって、歩き続ければ俺もいずれその場所に辿り着けるんだろうか。 手に持った拳銃が重い。これさえなければ楽になる気がするのに、どうしても掌から離れてくれない。 いつもこうだ。 本当に欲しかったものじゃないはずなのに、いつも間にか捨てられなくなっている。 余計な物ばかりが増えて、肝心な物が見えなくなって。 どれだけ歩いてきたのだろうと、どれだけ人を救えたのだろうと、 後ろを振り返って確かめる。 多くを望んでいたわけじゃない。 花の一つでも咲いていればそれだけで満足だった。 けど、そこにあったのは、俺の望んでいたものじゃなかった。 人間かどうかすら判別できない死体、折れ曲がって男か女かもわからなくなった肢体、 重なり合って庇いあって押しのけあった姿態。 そして、湖ほどに広がった地面を埋め尽くす赤くてどす黒い血のしずく。 誰も彼も眉間の穴から血を流して死んでいる。 拳銃・・・? そうだ、彼らは俺が殺したんだ。 手に握ったこの人殺しの道具で。 平和のために、戦争を終わらせるために、ああ、簡単だった。 引き金を引くだけでみんな死んでいった。 大したこともできないで、あっけなく光の中に消えて行った。 残ったものは、俺への呵責と次の戦争への火種だけ。 彼らは、こんなものを残すために生まれて来たのか。 俺は、こんなことをするために力を求めてたのか。 そこまで考えて違和感に気付く。 暗くてよく見えないが、この手触りは拳銃じゃありえない。 よく目を凝らしてみる。 手の中のそれは、確かにどこかで見たことがあった。 ああ、思い出した。夢で見たんだ。毎日のあの悪夢でずっと見てきたんだ。 そうだ、これは―――― ―――――マユの―――――ちぎれた―――――腕――――― 題名未定 第三話「 Like a dream come true 」 前篇 シン「うわああああぁぁっ」 見知らぬ部屋であることも、消毒液の匂いがすることも、頭の中には入ってこなかった。 あまりにもリアルだった断末魔の光景が、心の中をあっという間に掻き乱す。 思い出すだけで、耐えがたい狂気が、失うことへの恐怖が、どうしようもなく抑えがたい後悔が、 救えなかった者たちへの懺悔が、どっと夢から流れ込んでくる。 何より一番怖かったのは、あの感情は間違いなく『俺自身が生みだしたモノ』だと納得できてしまったことだ。 何だったんだ今のは。マユの腕がモノみたいに、いやマユだけじゃない。 母さんも父さんも、大勢の人が血だるまになって、腕や足がおかしな方向に曲がりくねって、 血があんなにあふれだして。あれは全部、俺がやったのか。 俺がマユ達を殺して・・・殺した? 違う、それは俺じゃない! 誰が殺した。誰を殺した。誰に殺された。わからない、肝心なところが思い出せない。 なんだったんだ、あれは。俺は、俺はどうして・・・。 ―――どうして、あんな光景を見たことがあるなんて思うんだ・・・。 訳のわからない物が突然頭に入り込んできたような、受け入れがたいおぞましい感覚に 俺は完全に正気を失っていた。 ?「大丈夫、ここにはあなたが憎むモノなんてないわ」 そんな混乱している俺の頭を、ふいに誰かが後ろからそっと抱きしめてくれた。 聞き覚えのある女性の声が、大丈夫と耳元でささやいてくれる。 誰なのかは分からなかったが、その声はとても優しくて、暖かさがゆっくりと心に伝わってくるようだった。 少しずつ、かき乱されていた感情が静まって行く。 ?「わかるでしょう。あなたは悪い夢を見ただけ。あなたの家族は元気でいるし、誰も死んだりしていない。だから、自分を見失わないで」 ・・・そうだ。何を慌ててたんだよ俺は。ちょっと考えてみればすぐにわかることじゃないか。 この世界にあんな不気味な場所があるわけないし、マユや父さんたちだって死んだりしてない。 何より、俺は人殺しなんてしたことが無い。 あれはただの夢なんだ。どんなにリアルだとしても『俺の身に起こったこと』じゃない。 あの感情も、『俺自身が抱いたもの』じゃない。 ?「・・・落ち着いたかしら?」 シン「あ、はい、いきなり取り乱したりして、すいませ・・・」 お礼を言おうとして振り向いた先で、微笑んでいたのは―――― 俺を抱きしめてくれているのは―――― シン「・・・っ!?」 紫「いえいえ、このくらいお安いご用ですわ」 ――――俺と彼女たちを殺そうとした、妖怪の『八雲 紫』だった。 考えるより先に体が動く。 相手は人間じゃない、何を仕掛けてくるかもわからない得体のしれない化け物だ。 このままだとまずいと考えた俺は、抱きついている腕を解いて背後にいるはずの八雲紫に向かって身構えようとする。 だが、後ろにいたはずの彼女は影も形もなかった。 かき消すように消えてしまったことに驚く間もなく、またも俺は前触れなく『後ろから』抱きつかれた。 シン(いつの間に回り込んだんだ、さっきまでそこにいたはずなのに?!) 紫「あらあら、また飛び込んでくるなんて、そんなに私の胸の中が恋しかったのかしら」 いや、抱きつかれたというよりも俺が背中から彼女の所に飛び込んで行ったというほうが正しい。 どうやったのかは知らないが、俺の動きを読んで何らかの能力で背後から背後へ瞬間移動したんだ。 急いで逃れようとするが、彼女の細腕は俺がどんなに力を込めてもびくともしない。 握られた手だけじゃなく、体全体がコンクリートで固められたように動かせない。 信じられないことに、俺は華奢な女性である彼女に腕力で完全に抑え込まれていた。 シン「ふざけるなっ! あんたが抱きついてきてるんだろうが!」 紫「そんなに怒らなくったっていいじゃない。ほんのじゃれ合いでしょうに」 シン「じゃれ合いはいいから離してくれ!」 紫「怒鳴らないの。いいじゃない、減るもんじゃないし」 シン「あんたはよくてもこっちが嫌なんだよ。あと、耳元でしゃべるな!」 紫「もう、怒鳴らないでってば。あんまり私を困らせるようならこのまま押し倒しちゃうわよ」 シン「なっ!!」 紫「ふふ、冗談よ。こういう経験はあまりないみたいね」 シン「~~~~~!」 まるで落ちてくる葉っぱに素振りをしているみたいだ。 どれだけ懸命に追いかけても、彼女はすいすいと身をかわしてしまう。 そのくせ、こちらが何もしなければ自分から寄ってくるのだから厄介なことこの上ない。 紫「さあ、そろそろお遊びはやめにしましょうか。まず分かって欲しいのが、私はあなたの敵じゃないってこと。 確かにやり方が悪かったことは認めるけれど、それだけはどうか信じて欲しい」 シン「・・・どうだか、あんたが敵じゃないって言ってたあのフィレモンって奴だってかなり胡散臭いしな」 紫「それについては私も同感よ。けれど、ペルソナを貰ったのだからその態度は失礼でしょう?」 シン「それは、そうだけど・・・」 真剣な口調から、急に母親が子供を叱るような口調に思わず毒気を抜かれそうになる。 シャドウとかいう化け物に貫かれた時に出会った男、フィレモンも『八雲 紫』は敵ではないと言っていた。 力を目覚めさせるには他に方法が無かった。 そして、その力がこの先必ず役に立つ時が来る、と。 これだけの腕力を持っていながら、俺を殺さなかったことからしても敵じゃないっていうのはたぶん本当のことなんだろう。 と言っても、まだ警戒を解くつもりはない。 何がしたいのかも、俺に付きまとう理由も、正体だって何一つわからない相手なんだ。 女性特有のいいにおいがして安らいだって、抱きしめられてるのが実は心地よかったって、 背中に二つの巨大なマウンテンサイクルが押し当てられて色々やばくったって、耳元で囁かれるのがこそばゆかったって、 惑わされたりはしない! ・・・たぶん。 シン「・・・わかった。敵じゃないって言うなら俺の知りたいことに答えてくれ」 紫 「何かしら。スリーサイズなら条件付きよ」 シン「あんたは・・・一体何者なんだ。本当に妖怪なのか」 思いついた中で、それが一番分かりやすくて一番本質をついたらしい質問だった。 妖怪と名乗っていたけど、そもそもこの科学が発展した世の中で妖怪なんているはずがない。 今は月面旅行が計画されて、地下に作られた卯酉新幹線「ヒロシゲ」が53分で京都と東京を結んでくれる時代だ。 正体を隠すにしても、不信感をあおる時点で、偽名、偽証の意味を成していない。 ロートルでマイナーな名称過ぎて相手に怪しまれるだけだろう。 だが、彼女は臆面もなくいけしゃあしゃあと、もちろんそうよと答えた。 シン「そうよって・・・妖怪なんているはずないだろ」 紫「見たことが無いから? それとも誰しもがそう答えるから?」 シン「そりゃあ・・・」 どちらかと問われればどちらもだ。聞けば誰もが妖怪などいないと答えるし、この目で見たこともない。 しかし、俺はそれが『いない』という証明にならないことに気づいてしまった。 宇宙人や幽霊と同じ原理だ。 今この世にいないだけで、人間がその存在を自分たちの歴史に置き忘れてしまっただけかもしれないのだから。 紫「それに、シャドウを目にしておいて妖怪の存在だけを疑うというのは不公平じゃないかしら」 シン「シャドウ・・・そうだ! あの化け物はどうなったんだ! 」 俺の記憶は、フィレモンとかいう男にペルソナとかいう力を貰ったあたりでばっさり途切れている。 俺が生きているということは化け物は逃げたか倒したかしたんだろうが、誰が大型シャドウを倒したことも覚えていないのだから、 あれから戦いはどうなったかなんて知るわけがない。 紫「そんな青い顔をしなくても、あの化け物は倒されたわ。きれいさっぱり跡形もなくね」 シン「そう、なのか。あんたがやってくれたのか」 紫「・・・シン、やったのはあなたなのよ」 シン「・・・はぁ? ・・・俺があいつを倒したって・・・どうやって?」 紫「なるほど、通りで要領を得ないはずね。(フィレモンのヤツ、暴走状態になるような危険なペルソナを渡すなんて…)」 シン「・・・(記憶がすっぽり抜け落ちてる。本当に俺が倒したのか)」 紫「いいわ、何から何まで順を追って説明しましょう。まずは、シャドウのことからね」 シン「・・・その前に、いい加減離して欲しいんですけど」 紫「だぁ~め、話が終わってからよ」 俺の戸惑いをよそに、彼女は静かに語り始めた。 シャドウの成り立ち、そして、科学という栄光がもたらした災厄を。
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銀「トランセル!体当たり!」 銀「トランセルに進化したのはいいけど攻撃力が低いしなぁ・・・でももう少しの辛抱だ」 19「ピカチュウもだいぶ育って来たし、そろそろジムに挑戦するか でもピカチュウに地面は効かないからなぁ ここはマンキーかなやっぱり」 ハクオロ「みんな焦りすぎだ レベル上げてから挑戦しないと後が辛いからな ここでフシギソウに進化させておくべきだよな」 ニート「よしビードルゲットwwww」 他のコテはまだトキワの森だった 一方絶好調の無個性は タケシ「押忍!」 無個性「すごい堅そうだな・・・・でもゼニガメいれば楽勝だお」 タケシ「行け!イシツブテ!」 無個性「ゼニガメ!泡だ!」 その後も快調にゼニガメで飛ばして行く そして・・・ タケシ「くっ・・負けた・・・グレーバッジだ、受け取れ。」 無個性「サンキュー よしこのまま突っ走るかぁ!」 レイ悶ド「糞!これはレベル上げとかないとヤバイ!」 19「うっしゃあ!あ、レイ悶ドじゃんか。」 レイ悶ド「一回勝負させてくれ」 19「いいけど?」 銀「やっとバタフリーに進化した事だし、行くか」 ハクオロ「フシギソウに進化したぜ まあこれくらいやっとかないと後が辛いって言うかなんて言うか・・ まあそんなもんか おっと!銀か」 銀「ハクオロじゃないか 一回やろうか?」 ハクオロ「・・・負けるけどいいのか?」 銀「負ける?何言ってんのか?そんな事言って逃げる気か?」 ハクオロ「逃げる・・・?笑わせてくれるな フシギソウ!」 銀「もう進化してんのか、でも、行け!バタフリー!」 ハクオロ「体当たり!」 銀「な、なんだと?一撃!?でもまだ一体ある。行け!イーブ・・・」 ハクオロ「これ以上やっても勝てないからやめろ」 銀「な、何を言う・・・まだこれから」 ハクオロ「俺のフシギソウの体当たりで一撃に倒れたバタフリーじゃあ、イーブイでも勝てん。」 銀「やってみなきゃ分からんねぇじゃねぇか!」 ハクオロ「ギタギタにやられてでも?」 銀「・・・・・分かったよ・・・・」 ハクオロ「フッ・・・」 ハクオロは不気味な笑い方で先を進めた」 銀の身体は震えていた その頃、19とレイ悶ドは 19「ピカチュウ!電気ショック!」 レイ悶ド「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 19「電光石火!」 レイ悶ド「負けたぁぁぁぁぁ」 19「よっしゃ!じゃあジムに挑戦してもいいな」 レイ悶ド「やっぱり駄目か・・どうすれば・・・」 ニート「トキワの森通過だお!」
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『Robochemist!』 第三話「起動、そして猫来りて」 機械の胃袋、棺桶とも表現できるその場所。 狭っ苦しい操縦席に体を押しこみ、さきほど手渡された鍵を鍵穴に差し込むと、力を込めて廻した。 ―――……キュィィィィィン……。 甲高い音と共に機体がガタガタ動揺、各部モーターが唸りを上げた。主機から送られる強大な電力が機体に行き渡り、重厚な造りのカメラアイに仄かな青色が宿る。 機体に積まれた電子機器が電子を流し込まれ産声を上げた。回路を伝い所定の場所に電荷、発熱。 カメラが撮影した映像が操縦席内部のモニターに映し出され、その上に被さるように大きいウィンドウが開く。その奥でプログラミング言語が高速スクロールする。 『キー確認』 『主機起動 正常稼働確認』 『全モーター起動 正常稼働確認』 『全ローラー起動 正常稼働確認』 『姿勢制御機構起動 正常稼働確認』 『総合戦闘管制システム起動 正常稼働確認』 『 〝アノフェレス〟 起動します 』 コンクリートの太い支柱が立ち並ぶ競技場で、全高5mもある灰色の外殻機が立ち上がった。遠目にみれば甲冑か何かが起立したように見えたに違いない。 ところが、アノフェレスは立ち上がるや否やふらふらとし始めた。それこそ酒でぐだんぐだんになったオヤジの方が余程しゃっきりしているという程に。 アルメリアはふらつきの止まらない機体をなんとか宥めようと、操縦桿とペダルを総動員して、外部に繋がっている無線に向かって慌てて口を開いた。 ≪っととととと、うわぁ、ちょっと、ふらつきますよ!≫ 外殻機には二種類の姿勢安定化機構が備わっている。 一つは内部機構により姿勢を安定させるジャイロシステム。 もう一つは機体の姿勢から自動で各部モーターを動かし倒れないようにするサーボシステムである。 ジャイロシステムは確かに便利だが、『なんとなく』安定するだけで効果が薄い。一方のサーボシステムは機体自ら姿勢を安定化させてくれるので効果が高いが、無論、欠点がある。 それは、『勝手に直してしまう』ことである。例えば戦闘で不自然な体勢を取って戦わなくてはならない時、サーボシステムの修正値が高かった場合、強制的に体勢を修正されてしまう。 もちろん、この場合は直さない、とプログラムすればいいのだが、何しろ戦闘に二度と同じ状況が無いように、その『場合』が多すぎてどうしようもない。繰り返し教えることで修正するしかないのだ。 四脚や六脚式ならば倒れる倒れない以前の問題だが、二脚式となるとそうはいかない。 勝手に姿勢を修正されてしまうと、アノフェレス最大のアドバンテージである機動力を殺されてしまうので、サーボシステムは『緩く』設定されている。 ただ撃つことのみに特化すれば三次元戦闘は行わなくてもよいが、アノフェレスは近接戦闘を念頭に設計した高機動外殻機なのでそうはいかないのだ。壁を蹴ろうとしている最中に地面に着地する体勢になったらどうなるか、ということだ。 結果、言わばセンスのある人間や熟練した人間にしか使いこなせなくなってしまっていた。 しかも装甲や機能性が犠牲になったピーキー機。利点を大いに活かすために反応速度は最大になっており、感度も極めて高い。つまり『遊び』が無いので操縦者の腕前がそのまま浮き彫りになるのだ。 アノフェレスの脚部はある程度広く造られているとはいえ、さぁ歩け走れ駆け回れと言われたら、難しい。いきなり乗って直立出来ているアルメリアはセンスのある方なのだ。 ではアノフェレスに蓄積されたデータを使えば良いのではと思うかもしれないが、操縦者の経験値が零では同じようなことだ。 ≪いいからさっさと歩け、話はそれからだ≫ 競技場の端で、いつ用意したのかパイプ椅子に足を組んで座ったセンジュは、手元の無線機に命令を下した。口調こそ淡々だが、久しぶりに活動が出来るので嬉しそうに見える。 その隣には両手を前で合わせたアオバが居る。ツナギ姿ながら、寄りそうようにしかも背筋をぴんと伸ばしているところは、まるで執事かなにかのようだ。 両手を横にしてバランスを取りつつ、一歩を踏み出す。アノフェレスの片足が、すぐ下に赤ん坊がいるような慎重さで地面を踏みしめた。ぎしりと小気味いい音が鳴る。 ≪教授、やっぱり私には無理っぽいです!≫ 無線越しに泣き言を漏らす。 それから機体の膝を地面に付いて、やっと安らぎを得ることに成功した。この体勢なら倒れように倒れまい。 戦闘になったら無様に転倒して笑い物になることが容易に想像できてしまった。敵前で転べば、銃なり剣なりの攻撃で戦闘不能になること間違いなし。装甲の薄いアノフェレスならあっという間だろう。 ≪ふむ………そうか、では………≫ センジュが頭をがしがしと掻き、紫の瞳を細め、無線を睨みつけた……その時、奇声がもう一つの無線機から聞こえてきた。 例えるなら、蔓にぶら下がったターザンの雄たけびのような。女だが。 ≪イィヤッホー!!≫ 同じく搭乗していたシュレーは無反応だった。……だった。 ちょっと離れた地点で眠っていた六脚式外殻機プロトファスマのカメラアイに突如として光が宿るや、ローラー全開で地をかっ飛んだ。あっという間に百mを走破すると、障害物手前で急停止してグルングルン派手に回転。 唖然とする皆を尻目に、六脚の安定性を活かして片方に傾き、ぐんと跳躍。火花を散らして着地。脚部が緩衝材の役割を果たし、上半身の揺れを最小限にする。 外殻機の中でも重量があるはずなのに、まるで四脚か二脚であるかのような軽快な動き。 ≪楽しーーーっ!!≫ 更に全速力で競技場を駆け回り、六脚式には困難とされる跳躍を再度行い、あろうことかコンクリート製の障害物に乗り、更に跳躍、着地、ローラーダッシュを決めて見る見るうちに膝をついているアノフェレスに突っ込んでいく。 六脚のロボットが全速力で突っ込んでくるのを眼にすれば、当然仰天の声を上げる。センジュとアオバがアッと息を呑んだ。 ≪わわっ!?≫ ≪よいしょーっと!≫ 全ローラー逆回転、脚部踏ん張り、上半身を傾け、それらの総動員によりプロトファスマはアノフェレスの装甲に接触する寸前で制動をかける。ローラーが白煙を噴き、地面に六本を超える複雑な線が描写された。 激しく動いたために機体から熱気が立ち上がり揺らめき、小規模な蜃気楼を構築する。 シュレーは満面の笑みを浮かべながら、機体を立て直した。モーターの唸りが競技場に響く。青いカメラアイが瞬いた。 「馬鹿な……六脚であの動き……」 「ええ、自分もあの動きは見たことがありません。初めて乗ったそうですが……」 「神はその者が望む才能を与えるとは限らない……か」 「神を信じぬ貴方が言いますか」 「表現上は仕方無かろうよ」 眉に皺を寄せて顎に手を置き難しい表情で考え事を始めたセンジュと、感心したように頷くアオバ。 一方アルメリアは交通事故に遭いかけたような心境で、恐る恐るといったように無意識に閉じてしまっていた眼を開けると、頭部を動かし、すぐ手前で直立しているプロトファスマを見遣った。カメラアイが光を細く絞る。 ≪ちょっと!≫ アノフェレスの腕が持ち上げられるや、プロトファスマの胴体を殴りつける。ガスンと鉄と鉄をぶつけた音がした。 プロトファスマの重厚な頭部が、あたかも『きょとん』とした風にアノフェレスの方を向いた。人間には到底見えぬ形状なのに、動きがいちいちコミカルなのは、きっと気のせいだ。 ≪なぁに?≫ ≪なぁに? ……じゃないですよ! 危なかった! 今のは結構危なかった!≫ ≪大丈夫だよ! ヨ!≫ ≪馬鹿ッ≫ またアノフェレスの文字通り鉄拳が振り上げられ、今度はプロトファスマの手に収まった。殴ったはずだ。だが、まさか受け止められるとは思いもしなかった。 シュレーは、相手が見てもいないのにニンマリ口元を上げると、その握りしめた硬き手をぶんぶん振った。 ≪外殻機で握手って、いいよね!≫ ≪確かに……じゃなくって!≫ 無邪気と言うか、驚きの白さというか、裏表の無い性格というべきか。一応怒ってみるアルメリアだが、当の本人は意に介さず、むしろそれすら楽しんでいるように思えてくる。 外殻機同士が握手し合う不思議空間が今ここに。 もう怒りなんて消えてしまった。 とりあえず握手を解除したアルメリアは、カッコがつかないのでアノフェレスでよたよたと立ち上がった。胃カメラを初めて飲んだ衝撃に打ち震える中年オヤジ並みのキレの無い動きだが、初めて乗った事を考慮すれば称賛に値する。 ≪ふぅ………立てた≫ 両手を横にして安定化させつつの情けない直立だが、彼女にとっては大きな一歩である。 すると今度は無線越しにぱちんと手を叩く音がして、頭部をプロトファスマの方に向けて見た。中の人と見事に同じ動作を再現しているのが見えた。才能の無駄遣いもいいところである。 シュレーが提案した。 ≪いいこと考えた!≫ ≪?≫ ≪私がそっちに乗ればいいんだよ、どう?≫ ≪………あっ≫ アルメリアはその発想はなかったと思い口をぽかんと開きつつも、二つの事柄についてほっとしていた。 一つは自分でも操縦できるであろうプロトファスマに乗れること。そしてもう一つは、肉体的なことである。何か。それは暑さだ。 ほとんど動いてないのにもかかわらず、操縦席内部は初夏の陽気。操縦椅子の後ろに申し訳程度に空いた冷却口から冷風が出ているが、全く意味を成していない。動き続ければどうなるかなど想像したくもなかった。 こりゃあ、死ねる。だけどシュレーなら耐えられる、ケロッとして居られる。 いつの間にかアルメリアの脳内ではシュレーが超人か何かに設定されていた。 その後、乗り換えて見たところやはりシュレーはアノフェレスをヒョイヒョイと乗りまわし、その場にいた全員を驚かせた。訓練も経験も無いはずなのに、動きが異次元だったからだ。 誰が宙返り後に美しい受け身を決めるなんて想像出来たのか。 兎に角、センジュチームは攻撃手にシュレーを。防御手にアルメリアに決定した。 なお、目標役は自動でも構わないのでのんびりと探すことになった。何しろ目標役は『動けるだけ』『無人』という制約上、最悪の場合センジュでもアオバでも棒立ちでも良い訳で、急ぐこともないからだ。 夏の大会まで2カ月あるかないか。果たして、彼女らは勝ちあがれるのだろうか。 彼女らの前途は多難である。 ◆ ◆ ◆ ◆ ロボットに関する講義を聞いて、部品の加工、締めに体育……これだけで一日がほぼ終了してしまったが、疲労はがっちりと溜まるわけで。そのあとに部室兼倉庫に寄ってゲームに関する説明をアオバから聞けば、既に夕方だ。 いくら春だからと言っていつまでも明ると思ったら大間違いだ。夕方になれば夕日が手を振り始め、更に時間が経過すれば空は群青に染まる。 疲れた体を引きずるようにして寮に辿り着いたアルメリアは、実家から郵送されてきた中にあった帽子を頭から取り、指に引っ掛けてくるくる廻しつつ、鍵穴に銀色の鍵を差し込み廻した。 鍵をポケットにするりと入れてドアを開きするりと入れば、ドッと疲れが筋肉の奥で牙を剥き出しにする。 「糖分、糖分を取らなきゃ……チョコー……蜂蜜ヨーグルトお菓子お菓子……おか……」 アルメリアはふらふらとリビングに入ると、さっそくソファーに倒れ込み顔を押しつけて、ぴくりとも動じず呟いた。心なしポニーテールも元気が無く、右に寄っている。 こんなときは甘いものを摂取するに限る。糖分は体に良い。疲労回復には寝るか糖分摂取と相場が決まっている。だが、考えただけで甘いものが出てくるわけも無く。 最短経路はキッチンに行き砂糖を口に放り込むことだが、疲れているとそれすら億劫だった。新しい環境に放り込まれた影響はそれほど絶大なのだ。 「念力があれば…………ねんりきサイコキネシス……」 顔をソファーに接触させたままモゴモゴと呟くアルメリア。 念力があれば楽だろうな。念じただけで物が浮いたり。空も飛べるかもしれないし、能力活かしてあんなことやこんなこと、子供の頃に夢想した出来事を実現して、人生を楽しくするんだ。 どうも疲れていると思考が妙な方向に飛んでしまうようである。 念力で空を飛びつつ機関砲をぶっ放す三つ編みの女の子が全身から光を放出しながら雄たけびを上げた。と、その光が緑色に変化して、バリアへと変質する。 「駄目……」 頭を振りあげてソファーにボンと落とす。眼よ覚めよ。シャワーも浴びずして寝るなど女子の沽券にかかわる。 全身に乗った鉛の塊を排除、両腕、頭、胴体、脚、その順番でソファーから起き上がり、突発性の欠伸を手のひらで隠し、涙で滲む眼を擦る。 熱いシャワーを浴びてジュースでも飲んで授業の復習予習をして寝よう。このままソファーに座っていては睡魔に手を引かれ極楽へ飛んで行けそうなので、立ち上がり伸びをすると、リビングを出る。 「ふぁ……ねむ……」 眼を開けていられない。立ったままなのに瞼がとろりと落ちてくる。両手を振る元気も無く、肩を落としたまま。 アルメリアは体に鞭を打ちシャワー室へと足を運び、止めた。呼び鈴が鳴ったのだ。友達の数が余り多くない現在、来るのはシュレーか、配達業者か、どちらかだろう。 ぴんぽーん、ぴんぽーぴんぽーん………ぴぴぴぴぴんぽーん、ぴんぽーん。 ドアの外の人物は何が楽しいのか呼び鈴をリズムつけて押しまくる。眠く疲れているときに呼び鈴を連打されたせいで、温和なアルメリアの心に沸々と苛立ちが募ってきた。 ずんずんと玄関に歩いて行くと、乱暴にドアの鍵を解除して取っ手を回し開けた。 「何か用です…………って、クー姉ちゃん!」 「むず痒いからクーでいい」 この苛立ちをどこにくれてやろうと企んでいたのだが、ドアを開いたらその気は消滅してしまった。 綿のように繊維の細い黒髪を三つ編みにして左右に垂らし、サファイアのエキスを塗りたくったように涼しく、内なる光を持つ紺碧色の瞳。存在感は希薄であるが、一度意識すれば記憶にずっと残る、そんな女性。 春物のブラウスとズボンはいずれも黒く、黒猫を擬人化したらこうなるのでは、というクーにとても似合っていた。 元々孤児だったクーは、アルメリアの両親の友人であるジュリアという女性の師匠格に当たるアイリーンに拾われて今まで育った。アルメリアと年齢が近かったこともあってか、よく一緒に遊んだものだ。 あの後クーはアイリーンの会社で働くこととなり疎遠にはなったがメールなどでやり取りはあった。お姉さんのような存在であり、友人でもあった。 そのクーが、一体こんな場所に何の用なのだ。 アルメリアはドアを半開きにしたまま、中に通すか迷った。 クーはその様子をじっと見ている。鏡面のような瞳に見詰められたアルメリアは変わってないなぁ、と思いつつもちょっとビクついていた。 クーが足元の重そうな鞄をちらりと一瞥して、口を開く。 「お願い」 「はい」 「泊めて」 「………はい?」 「泊めて」 「宿は……」 「無かった。泊めて」 アルメリアはぽかーんとしてしまった。訪ねてきた理由が泊めてくれだなんて、想像すらしてなかったのだから。 硬直したアルメリアとは対照的にクーは動じず、頭すら下げてくる。野宿すること自体に苦痛は無くても、島一つが学園の島では野外に寝れそうな場所が無く、警察に職務質問を受けた時の言い訳が思いつかないというのは秘密だ。 「駄目?」 「や、大歓迎ですけど、シャワー前だったから」 「ありがとう」 半身を逸らす様にして手を広げて迎える動きをして、それから自分が先に行く。後から荷物を引きずったクーがついていく。ドアがばたむと閉まった。 物珍しいのか棚の本を見たり窓の外から映る朱色の太陽をみたり、せわしない。女の子座りでも胡坐でもなく体育座りなのがなんともクーらしい。 傍らに置かれた大きくかさばる鞄がもそりと動いたが、クーが指でつつくと静かになった。顔を寄せると、“鞄に”語りかけた。 「動いちゃダメ」 「なんかいいました?」 「……何も」 キッチンでせっせせっせとレギュラーコーヒーを淹れていたアルメリアは、カップに眼を落したまま聞いてみた。独り言なのだろうと自己処理した。 動いてはならぬと言われたら動きたくなるのが動物の常。鞄の暗闇を見つめ続けるそれは、お得意のパンチで鞄内部から外部に震動を発生させた。鞄の一部が膨らむ。 しかしクーは慌てず騒がず鞄の取っ手を掴むや、逆さまにひっくり返した。 「フギャッ!?」 憐れかな。まことに憐れかな。 くぐもった悲鳴が一つ上がりて。中で小さく小分けされた荷物の間に身を潜めていた動物は、天地が逆転したことに受け身も取れなかった。いくら身体能力が優れようと身動きとれない状況では意味をなさぬ。 コーヒーの入ったカップを持ってリビングに戻ってみれば、鞄をひっくり返すクーの姿があるわけで、思わず首を傾げる。 「何でもない。何でもない」 「ふ~ん……あ、はいコレ」 「コーヒー?」 「ミルクと砂糖入りですよ~」 「好み」 クーはカップを受け取ると、ソファーの方に移動して、なんとなしにゴクリと一口飲んだ。アルメリアはその横に腰掛けて一口。 さて、クーは猫っぽいところがあるが、現実的な問題として熱いものが飲めない。だというのにうっかり熱いコーヒーを飲んでしまったのだ。舌が熱を感知。たちまち全身に悪寒ならぬ熱寒(?)が閃光した。 「ぐぶっ!?」 コーヒーをひっくり返す前にアルメリアに手渡し、舌をだらりと出して悶絶する。七転八倒しそうになるのを堪え、ぷるぷると両手を握って涙を滲ませた。 「だ、大丈夫?」 「ひらが、あつふてッ、さまへばよかった!(舌が、熱くて、冷ませばよかった!)」 「ごめんなさい! 熱いの駄目って忘れてて……」 クーは心配そうな顔で見つめてくるアルメリアに手を振って大丈夫アピールをすると、こくりと唾を飲んだ。まだ舌がびりびりしていていて、ひりりと痛む。今度からは冷ますべきだ。 その声を聞き付けた鞄の中の動物は、心配してもぞもぞと動き鞄から顔を覗かせようとした。それがいけなかった。 「………んー……今動いたような?」 「動いてない。全然動いてない。何も入ってない」 二つ持ったカップのうち自分の方に口をつけて芳醇な黒液を飲んで、視界の端っこで何かが動いた気がして眼をやれば、床で放置された鞄が蠢いた。 怪しいなんてものではない。不気味だ。いわゆる非科学や心霊の類を懐疑的な眼で見るアルメリアにとって、ポルターガイストだのなんだので処理できる事項ではなく、当然中に何かが居ると考えるのが妥当だ。 鞄は大きいが人の類が入れる大きさではない、つまり中に動物がいる、クーが連れているのはいつも猫。単純な方程式を読み解けば、中身の推測は容易であった。 首をぶんぶん振りまくって否定するクーを横に立ち上がるとカップ二つを机に置いて、草食動物を狩る肉食動物のように四つん這いで接近する。 「本当に無い」 「なんで必死なんですか?」 「……何も無いから」 クーが心なし焦った様子でアルメリアの手を引き止めさせようとする。何も無いなら開けても問題はないはず。これはクロだろう。クロだけに。 鞄に手をかけて、チャックを一気に引く。 なぁおおおーーん。 黒の体毛に、空色の瞳をもった一匹の雄猫。お座りして尻尾を体にくっつけるようにして、外の眩しさに眼を細めつつ鞄の中からアルメリアをじっと見つめていた。縦に割れた瞳孔が爛々としている。 クーはどうしようもなくて、両手を宙に浮かしたまま右往左往した。言い訳は思いつかなかった。 この場に至って誤魔化せるだろうか。否、不可能だ。 「………えっと」 「クロちゃん?」 「うん、クロ………」 「べっつに隠すこともないと思うんですが。この寮、規約ではペット禁止って書いてないし。クロちゃんお利口さんですから、粗相もないと思いますから」 「……いいの?」 追い出されることを心配していたが、どうやら大丈夫なよう。 アルメリアの顔色を窺い、鞄から顔をだしてあっちこっちを観察しているクロに眼を落とし、そろそろと手を伸ばすとぺたんと床に座り、抱き寄せ膝の上に乗せた。 クロは大人しく膝の上に乗ると、前足で顔を洗って、舌で舐めた。長年付き添ってきた人間の膝はとても落ちつくもの。同等の態度で接し、また生活してきたが故の絆。 「……あれ?」 同じく傍らに座ったアルメリアはクロを撫でようとしてその異変に気がついた。 以前見たときよりも毛並みが荒く、また痩せている気がするのだ。というか確実に肉が落ち、動きにハリが無い。 言うならば、そう……。 「………もう御爺ちゃんだから。眼は悪くなったし獲物は取れない。ジャンプすると転ぶ。鳴き声もダミ声…………」 「そうなの……」 「いい。生き物は私も含めて老いるから。でも私はクロを見捨てない」 「家族ですもんね、クロちゃん」 「家族…………うん」 なぁ~お。 幾分掠れた鳴き声。若い頃と比べたらずっと老いてしまったクロを、クーが緩く腕に抱く。 人の寿命が最高100年として、猫の寿命は最高で20年ほど。クーが美しい女性になった頃には、彼女の半身たるクロは老齢になってしまった。違う種は共に歳を取ることすら困難なのである。 アルメリアはクーがクロを愛しむように喉を撫で始めたのをみて、心が安らぐと同時に悲しくなってきた。喉がごろごろ鳴りて、気持ち良さそうに瞼が降りる。 いつか老いる。いつか死ぬ。産まれたものは死ぬ。瞬時に頭に浮かぶ文字列に意識をとられる。 いけない。ネガティブな思考は常に行動の脚を引っ張る。というより、そんなに心配なら鞄に入れて持ち歩いたりひっくり返さなきゃいいだろうに。それも触れ合いの一種なのか。 アルメリアは頭を振ると、コーヒーを一気に飲んでしまおうとカップを取りに行き、口をつけた。湯気立つそれは淹れたてでとても熱い。カップを持つだけでも熱い。 「それ熱……」 熱いはずのコーヒー一気飲みと言う苦行を始めたアルメリアを、クーが宇宙人に握手を求められたときだってそんな顔をしないなほどまで引き攣らせ、手を上げた状態で硬直して見守った。 カップの中身を咥内に。一気飲みで味なんて分からなくて、黒液に舌や喉が異常温度に晒された。粘膜が根こそぎなんとか胃袋に流しいれた。白い喉が上下した。 「んぐっ、んぐっ………ふぅ。シャワー浴びてきますね!」 ぐいと口元拭いて、カップを机の上に置く。 なんというタフネス。クーが感心してぱちぱち手を叩いた。 「………すごい。じゃあ私は泊めてもらう代わりに料理作る」 「いいんですか?」 「もちろん」 さっそくクーはクロをソファーに寝かせると、キッチンの方に歩いて行った。アルメリアは上の服を脱ぎつつ、シャワー室に歩いて行った。 結局クーがアルメリアの部屋に住みついたというのは言うまでも無い。 ―――……ちなみに。 「あ、ところで」 「?」 「この学園には何の用事?」 「アイリーンに経験を積めって言われたからちょっとした仕事をしに。知り合いのセンジュって人のとこに連絡してあるから行ってきなさいって言ってた」 という会話があったそうな。 【終】 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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◇今回予告 赤眼の男、ゼルギアによるダブラル襲撃を辛くも凌ぎ切ったどら猫な~ん(仮)一行。 ゼルギアとは一体何者だったのか、エイテルはどうして狙われたのか、そして黒い靄(もや)を弱めたあの雄叫びは何だったのか。 わからないことだらけの現状の中、キミたちはある依頼を引き受けることとなる。 アリアンロッド2E 第3話「伝承を求めて」 冒険の舞台がキミを待つ! ◇オープニングフェイズ ◆オープニング① ゼルギアとの戦いを終え、ダブラルの街を覆っていた黒い靄が晴れると、付近の家屋の住人たちが続々と外に出てくる。 「おい、今何が起きたかわかるか?」 「いや、俺も気絶してたみたいで…どうなってるんだ?」 どうやら街の人々の多くは気を失っていたようであった。 すると、街の入り口の方から複数の馬の蹄の音が聞こえてくる。 その音は徐々にこちらへと近寄ってくるのがわかった。 キミたちが音のする方へと目を凝らしてみると、馬に跨り先頭を切って走ってくるのはダブラル首長であるフィル・ルースターであった。 「ふぅ、依頼を終えて帰ってきたらこれか。誰か、今の状況を説明できる人はいるかい?」 「…ん?どうやらキミたちは多少状況の理解が出来ているようだね?よし、ここで立ち話というのもなんだから、長老の家まで一緒に来てもらえるかな?」 フィルはキミたちにそう声をかけてくる。 ◆オープニング② フィルに連れられ、キミたちは長老の家を訪れる。長老の家に着くとフィルは周囲の人払いをし、家の中にはダブラル首長であるフィルと、家主である長老、そしてシェンファン、リーフ、ナミキ、エイテルが残されていた。 「さて、詳しい話を聞く前に少し状況の整理をしたいんだけど構わないかな?」 「まずは初めましての挨拶かな?私はフィル・ルースターと言います。このダブラルで首長を務めています。どうぞフィルと呼んでください」 フィルはエイテルの方を向くと挨拶をし始める。 「あ、はい…初めまして。エイテルと申します」 エイテルもフィルの方に向き直ると、丁寧にお辞儀をしながら挨拶を交わした。 「はい、よろしくお願いしますね。…さて、挨拶が済んだところで早速本題に移るけど、私が傭兵団の皆と共に街に帰ってきた際、街には何らかの結界のようなものが張られていてね。色々試してはみたけど、どうやら外部からの干渉を一切受け付けないものだったらしく、街の中に入ることができなかったんだ。で、打つ手もなく暫く様子見状態になっていたところ、結界が突然消えたもんで、周囲を警戒しつつ、慌てて街の中に入ってきたわけなんだけど…」 フィルはそう言うと、キミたちの方に視線を配っており、どうやら状況の説明を求めているようであった。 「なるほど…そんなことがあったんだね。長老はこの状況をどう考える?」 フィルが長老に話を振ると、長老は悩ましげな表情で何やら考え込んでいる。 「むぅ…お主らが見たという黒い靄と、街に張り巡らされた結界…あれは、精霊の力を利用した高位結界術じゃ」 「周囲の者が視認できるほど多くの精霊をその場に呼び集め、その力を使役し結界を張る。しかも、あの結界は外部からの干渉を完全に遮断するばかりでなく、内部にいる他者の力を奪い自らの力に変換するという非常に高度な術式で組まれたものじゃ。そのゼルギアという男、相当な実力者よ…お主ら、よく生き残れたの~…」 「まあ何はともあれ、戦場で生き残るっていうのは傭兵において最も重要な才能だから。こうして誰一人欠けることなく敵を退けたキミたちはよくやってくれたと思うよ。でもエイテルさんが狙われていたというのは…どうしてだろうね?そのゼルギアという男は何か話してはいなかった?」 「そうか、その男がそんなことを…。薄々そうかもしれぬと思ってはいたが、これは放っておくわけにもいかなくなったようじゃの~…」 「エイテルさん、もしや貴女は“森の女神”なのではないですかな?」 「…え?」 突きつけられたその言葉に、エイテルは困惑の表情を浮かべている。 「魔を封じておるとされる危険な場所に、何の力も持たぬおなごが1人で入って行ったというのはどうにも考えにくいことじゃ…しかし、入って行ったわけではなく、あの場所に初めからおったというのなら説明はつく。そしてゼルギアという男、そやつはもしかしたら……いや、今日のところは、この話はここまでにしておこう。お主らも、今日は家に帰ってゆっくり休むとよい」 「まあまあ。キミたちが疲れているのは確かなんだし、長老の言う通り、今日はこれくらいにして休むことにしようじゃないか」 キミたちが長老の家を出て、各々の家に向かっていった後 「長老、どうやら賽は投げられたようだね。おそらく次は…」 ◆オープニング③【シェンファン】 長老の家を出て、キミたちが各々の家へと帰宅していった後、シェンファンもまた宿屋で身体を休めていた。すると、突然の来客が訪れ、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。 キミが部屋の扉を開けると、そこにはフィルの姿があった。 「やあ、夜遅くにごめんね。ちょっと話があるんだけど、入れてもらっても構わないかい?」 「ふぅ…今日はお疲れ様。ここんとこ街に来た依頼をリーフたちとこなしてくれていたそうだね?人手も足りてなかったし、助かったよ」 「それで、今日ここを訪ねたのは昔キミに頼まれた件について話をしておこうと思って。他の人たちにはあまり聞かれたくなさそうだったし、私もバタバタしていたからすっかり話をするのが遅くなってしまった」 「単刀直入に言うと、他者に乗っ取られた肉体を取り戻す方法…私なりに調べてはみたんだが、残念ながら具体的な方法に関して有益な情報は得られなかった。そういうことに特化しているのはやはり、キミがいた東方世界のカンナギたちなんだろうけど、こちら側、西方世界ではキルディアのシャーマンたちが詳しいかもしれない。あとは…そうだな、魔術関連の知識ということであればエルクレストの大図書館に当たってみるのもいいと思う。とまあ、私から話せることはこんな感じなんだが…大した力になれなくて申し訳ないね」 「キミがどうしてそんなことを知りたいのかはわからないけど、わざわざこちら側に来てまで調べているのだから、キミにとっては大事なことなんだろうね」 「もしキミがエルクレストの大図書館を当たるというのであれば、私から知人に連絡を取って図書館を利用できるようにしておこう。…ただ、その代りと言ってはなんだけど、またキミに1つ頼みごとをしたい」 「明日、改めて皆に伝えようとは思ってるんだけど、ドラドル、リーフ、ナミキ、そしてエイテルさんで、彼女の記憶を取り戻すための旅に出てもらおうと思っているんだ。そこにぜひキミにも同行してもらいたい。どうかな?」 「ありがとう。リーフもドラドルも放っておくと偏った食生活を送って、栄養失調で倒れかねないからね。キミがいてくれると安心だ。よろしく頼むよ」 「それじゃ時間も遅いし、そろそろお暇しようかな。それじゃまた」 くっまだ、まだ見つからないのか ◆オープニング④ 翌朝、キミたちは首長から呼び出され総務局を訪れていた。 朝の総務局は仕事に向かう傭兵たちで溢れかえっており、昨日の襲撃が嘘のように活気に満ちていた。 「おっはよー!新人諸君っ!おっ!今日はドラドルくんもちゃんと一緒だね?いやー元気になって何よりだよー」 受付嬢のチルチルが元気よくキミたちに声をかけてくる。 「さてさてっ!これからキミたちには、ひっじょ~に重要な依頼に取り掛かってもらうよっ!拒否権はないから心して聞くようにっ!」 「よし!誰も反論はないようだねっ!素直でよろしい!」 「それじゃ仕事の内容に関しては、首長から直々に説明があるからね!首長ー!カモーンっ!!」 「いやはや、いつも元気だね~チルチルは」 キミたちが声のした方を振り返ってみると、苦笑いを浮かべたフィルがこちらへと歩み寄ってきていた。 「元気っ娘が僕の売りだからねっ!依頼でお疲れの皆に僕の元気を分けてあげるよっ☆」 「うん、いつもありがとね。それじゃあ早速、皆に依頼内容の説明を始めようかな」 「端的に言うとね。キミたちには、エイテルさんに記憶を取り戻してもらうべく、彼女と共に旅に出てもらおうと思っていてね」 「長老としてはもう暫くこの街で様子をみていようと思っていたみたいなんだけどね、キミたちも知っての通り、彼女を狙う者がこの街に攻め入ってきた。しかも、ご丁寧にも単独で、傭兵が集うこの街に、だ。相手が力量も計れない愚か者でなければ、おそらく相当な手練れというわけだね」 「昨夜の一件で、彼女がこの街にいることは相手にバレてしまったし、そもそも相手の結界術の性質上、数で攻めるような戦い方はあまり利口とは言えない。その点、キミたちは昨晩の戦いで相手の結界内でも自由に行動してみせたし、街の外に出てしまえば相手に消息を掴ませづらくもなる。キミたちほど、この依頼に適任な人材はいないというわけだ。…どうだい?やってくれるかい?」 「うん、ありがとう。まずは南方にあるエルクレストの街に向かうといい。あの街なら神話や伝承に関する資料も沢山あるだろうし、信頼できる知人もいるしね」 「エルクレスト・カレッジで教員をやっているエルヴィラさんという方だよ。優しくて面倒見のいい女性だから、安心していい」 「それじゃ早速旅の支度を始めてくれ。そうだな…今から3刻後に街の入場門前に集合しよう。それじゃ解散っ!…っと、そうだ。ナミキは後で家に寄ってもらってもいいかな?少し話があるんでね」 ◆オープニング⑤【ナミキ】 ナミキがフィルの家を訪れると、フィルはいつもの朗らかな表情でキミを出迎え、お茶を振る舞ってくれる。 「大したもてなしも出来なくて悪いけど、よかったら飲んでくれ」 そう言うとフィルは湯のみをキミの前に差し出す。 「ズズッ…ふぅ……話と言うのは、キミたちのエルクレスト行きに関してだ」 「キミにとってあの場所は苦い思い出しかないかもしれないけどね…私は、良い機会なんじゃないかなって思ってるんだよ」 「キミはキミ自身が抱えてしまったものをもて余してしまっているように私には見えるからね。積極的にそれをどうこうしろと言っているわけではないよ?ただ、それに振り回されて、キミがキミ自身の人生を生きられなくなってはやっぱりいけないと思うんだ」 あの人と同じことを言う あの人のようになれるように 変なところ 「この旅はエイテルさんの記憶を取り戻すためのものだ。でも、旅の目的は何も1つでないといけないわけではない…キミにはこの旅の中で、キミ自身の目を通して色々なものを見てきて欲しい。そして色々なことを経験して、自分の意志で、この先の未来を決定していくんだ」 「キミのご両親のことなら心配は要らない。あそこはどこよりも安全だし、彼等は信用できる人たちだからね」 「うん、キミが出した結論を私も楽しみにしているよ。…それともう1つ。これは私から折り入ってキミにお願いしておきたい。リーフとドラドルのこと、どうかよろしく頼む。私はあの2人と血の繋がりはないけれど、実の子供のように育ててきたつもりだ。それこそ、2人が失くしてしまったものを埋めてあげられるように。でもきっとこの旅で、2人が辛い現実にぶち当たることもあると思うんだ。だから、どうかその時にはキミの力を2人に貸してあげて欲しい。よろしく頼む」 フィルはそう言うと、キミに向かって頭を下げた。 「ありがとう」 ◆オープニング ニャルフォンス 「アイツ、オイラの存在に気付いてたにゃ。トラップをアイツに向けて作動させた後、黒いのがグワーってオイラの方に押し寄せてきて、逃げるのが大変だったにゃ」 人とは違う気配 マスター 「そうだ、リーフ。これから長旅に出るんだってな。こいつは選別だ。持っていきな」 そう言ってマスターは酒瓶を一本キミに手渡してくる。火酒(アイテムP61)入手。 ハムスター 《食べ物をあげますか?》【空腹判定:10】 野菜 にく:2 / 果実:3 / 料理:5 書簡→『偽りの神に集いし者たちを駆逐せよ』 エイテル(ドラドルとの友好度1上昇) 「皆さんにはご迷惑をお掛けしてしまって、本当に申し訳ございません…」 「私は、長老さんがおっしゃっていたように、本当に森の女神なのでしょうか?未だに何も思い出せなくて…」 「ありがとうございます。これからもどうかよろしくお願いします」 記憶ない 背中に乗せてくれ ◇ミドルフェイズ ◆ミドル① 3刻後。キミたちは首長に言われた通り、旅の支度を済ませ街の入場門前に集まっていた。そこにはフィルと長老、そしてチルチルがキミたちを見送りに来ていた。 「それじゃあ皆、道中十分に気を付けてね」 「リーフ、あまりいたずらばかりして皆を困らせるでないぞ。ドラドルはあまり食べ過ぎぬようにな」 「ははは、長老。二人共もう子供じゃないんだから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。…それじゃあナミキとシェンファンも気を付けてね。」 「ちょおっと待ったああああ!!キミたち、そんな軽装備で旅に出るつもり?!ピクニックじゃないんだよ?!!首長も!なに普通に送り出そうとしてるんですか?!」 「え、でも道中で色々調達していけば大丈夫じゃ…」 「あっまーーーーい!!!そんなサバイバルな旅を初っ端から想定してどうすんですか?!だいたい寝るとことかどうすんですか?!野宿ですか!エイテルさんもいるんですよ?!あーもう!これだから男共は…!」 「ははは…面目ない」 チルチルの勢いに、フィルは苦笑いを浮かべ、たじろいでいる。 「全く…やっぱり見送りに来といて正解だったよ。ほら、馬車を用意しておいたから使って。水とか食料とか道中必要なものもある程度積んであるから」 「うん。皆、元気でね。もし寂しくなったら馬車の天蓋を見上げてみて。僕の特大ポスターが貼ってあるから、それを見て元気を出して☆」 「それじゃあ今度こそ。皆、気を付けて。また元気な姿を見せてくれ」 そうして皆の笑顔に見送られ、キミたちの旅は始まった―――。 ※馬車(アイテムP65)入手。街から街への移動中は基本的には馬車に全員騎乗もしくは同乗しているものとする。またその状態で戦闘に入った場合、馬車は耐久値(HP)が100に設定され、0になると馬車は破壊され、積荷も奪われるものとする。 ◆ミドル② キミたちが南方に位置するエルクレストへと向かう道中、街道脇に具合が悪そうにうずくまっているマントを被った人の姿を発見する。 【声をかける】→【危険感知:達成値13】 【成功】→PCはその人に声をかける直前、妙な気配を察知し、皆に注意を促す。 「ちっ!気付かれたか!野郎共、やっちまえ!!」 【失敗】→PCはその人に近付き、声をかける。 「すみません。少し気分が悪くて…でも大丈夫そうです、よっ!!」 そう言うと、その人はキミの腹部に強烈な拳による一撃を加える。 PCに[4D+11]の物理ダメージ 奇襲攻撃 【声をかけない】→ 奇襲攻撃 【戦闘】賊robber(「ボディガード」エネミーP53)lv4×5 ◆ミドル④ 旅の夜を迎える。キミたちは途中にあった小川の側へと馬車を付け、野宿をすることにする。夜空には星々が輝き、穏やかな川の流れがキミたちの眠気を誘った。 【危険感知:達成値15】 【成功】→キミは誰かに見られているような気配を感じ、他の人たちにも警戒を促す。 すると、ガサガサッ!近くの茂みから武装した黒づくめの男たちが現れ、攻撃を仕掛けてきた…! 【失敗】→奇襲攻撃 【戦闘】明度2(すべての行為判定のダイスが1個減少) 暗殺者assassin(「ドラゴントゥース」エネミーP53)lv5×3 ◆ミドル⑤ キミたちは数日間に及ぶダブラルからの道のりを経てエルクレストに到着する。賢者の街エルクレスト。多くの知識人がこの街に集い、魔道の道を志した多くの若者が日夜研鑽に励む。また、この街には豊富な知的財産と魔道具が保管されており、それらを狙って陰で蠢く勢力が後を立たなかった。 「あの~。もしかして、どら猫な~ん(仮)の皆さんですか?」 街の中に入ると、学生服を身に纏い頭には真っ黒な魔女の帽子を被った一人の少女が、キミたちに声をかけてくる。 「やっぱり!良かった~。無事に皆さんと合流することができて。あ!申し遅れました。私はファムリシアと申します。ファムって呼んでください。エルクレスト・カレッジの学生で、今日は皆さんの案内係をするようにとエルヴィラ先生から言付かってます!若輩者ではありますが、何卒よろしくお願い致します!」 「早速ですが、校内にて先生がお待ちですので、そちらにご案内致しますね」 ファムに案内されるままに、街中を通ってエルクレスト・カレッジへと向かっていると、道端で話をしている学生たちの会話がキミたちの元まで聞こえてくる。 「…聞いたか?アルテインで神具が奪われたってよ」 「…あぁ、聞いた聞いた。街も大半が燃やされたらしいぜ。怖ぇよなー」 「…こういう事態が起こる前に神具をこの街に預けるようにって先生たちも再三言ってたのに。勿体ないことをしたぜ、全く」 聞こえる限りではあるが、どうやらアルテインの街で神具が奪われたらしいということがその話からわかった。 「…北にあるアルテインの街が先日魔族に襲われたそうです。街で祀っていた神具も奪われてしまったみたいで…」 「奪われてしまったものは仕方ありませんが、やはり惜しいことをしたなとは思います。奪われてしまった神具に関してはまだきちんと調査がなされていませんでしたし…」 「その点、この街にも創設時から神具は保管されていますが、警備が厳重なので何も心配は要りません。エルクレスト・カレッジの魔道技術は凄いですから!」 「ささっ!そんなことより早く先生の元に向かいましょう!」 ◆ミドル⑥ ファムに案内されるまま、キミたちはエルクレスト・カレッジの敷地内へと入っていく。敷地内ではファムと同じように学生服に身を包んだ多くの若者たちがそこかしこで何やら小難しい話を繰り広げており、さすがはエリンディル内でもトップクラスの学生たちが集う学校だけはあるといった様子であった。そのままキミたちが敷地内にある建物の1つへと入っていくと、豪華なエントランスがキミたちを出迎える。エントランスの中央には1人の女性が佇んでおり、キミたちの姿を見付けると、ふっと微笑みを浮かべる。 「あっ!先生ー!大変お待たせしました!どら猫な~ん(仮)の皆さんをお連れしてきました!」 ファムは大きな声でそう告げると、その女性の元へパタパタと駆けていく。 「ご苦労様、ファムリシアさん。…皆さん、初めまして。私はこの学校で教員をしていますエルヴィラと申します」 「皆さんのことはフィルさんから伺っていますわ。今日は当大学の大図書館で調べ物をしたいとのこと…皆さんが必要とするものがあるかはわかりませんが、当大学ほど豊富な資料が揃っている場所もないでしょう。どうぞこちらへ。ファムリシアさんも皆さんのお手伝いをして差し上げて」 「はい!」 ◆ミドル⑦ エルヴィラに連れられキミたちが建物の奥へと進んで行くと、吹き抜けになった3階建ての大きな図書館に出てくる。広さと高さを備えた建物の壁際にギッシリと蔵書が収まったその光景は圧巻だった。 「到着しました。こちらが当大学の誇る大図書館です。この大図書館は5つの棟に分かれ、ここが受付と倉庫、閲覧室を兼ねている総合受付棟となります。5つの棟の中央に位置するこの棟から他の4つの棟へと通路が分岐し、神学と法学関連を所蔵している光の館、魔術や天文学に関わる書を収める星の館、錬金術および美術、建築に関する書を所蔵する水銀の館、歴史や地学、生物学関連を所蔵する時の館、詩や物語を収める薔薇の館へと繋がっています。本日は後5刻ほどで閉館の時間となってしまいますが、それまでは皆さんのご自由に調べ物をしていただいて構いません。どうぞごゆっくり」 【調査イベント】 図書館にて情報を得ましょう。皆さんは5ラウンドの自由行動が可能です。蔵書を読むためには、各々の蔵書に設定された【知力判定】の達成値を達成する必要があります。1冊の本を読む毎に1ラウンドが経過し、専門性が高くなる書籍ほど達成値が高くなっているため、誰がどの本を読むか、考えて分担していきましょう。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【神魔伝承Ⅰ―エルダの民―】【神魔伝承Ⅱ―風の粛清―】【神魔伝承Ⅲ―水の粛清―】 【神魔伝承Ⅳ―地の粛清―】【神魔伝承Ⅴ―火の時代―】【神魔伝承Ⅵ―妖魔の王―】 【神魔伝承Ⅶ―魔族―】【神魔伝承Ⅷ―邪悪化―】 【千年桜物語Ⅰ】【千年桜物語Ⅱ】【千年桜物語Ⅲ】【千年桜物語Ⅳ】【千年桜物語Ⅴ】 【エリンディル史Ⅰ―王国の成立・2大王国の衝突―】 【エリンディル史Ⅱ―エリンディル統一・宗主国の分裂―】 【エリンディル史Ⅲ―魔戦将襲来・キルディアの共和制―】 【エリンディル史Ⅳ―帝国の侵攻・同盟の結成―】 【精霊術基礎学ⅠA】【精霊術基礎学ⅡB】【精霊術基礎学ⅢC】 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【神魔伝承Ⅰ―エルダの民―】達成値:10 【神魔伝承Ⅱ―風の粛清―】達成値:10 【神魔伝承Ⅲ―水の粛清―】達成値:10 【神魔伝承Ⅳ―地の粛清―】達成値:10 【神魔伝承Ⅴ―火の時代―】達成値:10 【神魔伝承Ⅵ―妖魔の王―】達成値:10 【神魔伝承Ⅶ―魔族―】達成値:10 【神魔伝承Ⅷ―邪悪化―】達成値:10 【千年桜物語Ⅰ】達成値:8 【千年桜物語Ⅱ】達成値:8 【千年桜物語Ⅲ】達成値:8 【千年桜物語Ⅳ】達成値:8 【千年桜物語Ⅴ】達成値:8 【エリンディル史Ⅰ―王国の成立・2大王国の衝突―】 達成値:10 【エリンディル史Ⅱ―エリンディル統一・宗主国の分裂―】達成値:10 【エリンディル史Ⅲ―魔戦将襲来・キルディアの共和制―】達成値:10 【エリンディル史Ⅳ―帝国の侵攻・同盟の結成―】達成値:10 【精霊術基礎学ⅠA】達成値:13 【精霊術基礎学ⅡB】達成値:13 【精霊術基礎学ⅢC】達成値:13 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【千年桜物語】全巻読破イベント 物語を全て読み終えると、ドラドルは突如激しい頭痛に襲われる。 割れるような痛みの中、頭の中には霧が僅かに晴れたようなぼんやりとした光景が広がってくる。 暖かな木漏れ日が差し込む静閑な森の中。 自分よりもずっと大きな身体をした屈強なドラゴンと1人の女性とが穏やかな笑みを浮かべながら対話を楽しんでいた。 そして、その光景が再び霧の中へと閉ざされていくと、ドラドルの頭痛もまたおさまっていた。 【精霊術基礎学】全巻読破イベント キミたちが精霊術基礎学を全て読み終えると、近くで別の資料に当たっていたファムが声をかけてくる。 「あれ、精霊術基礎学を読んでいるんですか?それ、私たちが普段使ってる教科書なんです」 「授業で習ったことなんですが、神霊と契約を交わした魔道士の身体には、神魔の刻印と類似した刻印が刻まれるそうですよ。私も契約とまではいかなくても、一度でいいから神霊と会ってみたいな~。まぁ私の霊応力では、神霊と他の精霊を区別することなんて出来ないと思うので、それも難しそうですけど」 【調べ物イベント終了後】 キミたちが調べ物を終えると、ふとエイテルが涙を流していることに気が付く。 「え…?私は…どうして、泣いているのでしょう…?何だかとても…悲しい気持ちが込み上げてきて、胸が、苦しい…」 「…すみません。何も思い出せないままなのに…どうしてこんな…」 「いえ、もう…大丈夫、です。私の記憶を取り戻すために、皆さんにご協力いただいているのですから…私も、頑張らなくては」 エイテルはそう言って切なげな笑顔を浮かべた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆ミドル⑧ 閉館の時間を迎え、キミたちは調べ物を切り上げ、外へと出る。キミたちはファムに案内され、宿へと向かっていた。外はもうすっかり日が暮れており、視界には夕闇が広がっていた。 「皆さん、お知りになりたかったことについては調べられましたか?」 「そうなんですねー…。うーん…こんな時、禁書があれば、すぐに何でもわかるんでしょうけど…」 「あ、学校に伝わる七不思議みたいなものなんですけど。この大図書館のどこかに、世界中のあらゆる知識を詰め込んだ魔道書が存在するそうなんです。それがあれば、皆さんの知りたいことに関してもわかりそうだなって」 「でも、そんな実在するかもわからないものにすがってても仕方ないですね。よし…!明日も引き続き、地道に頑張りましょう!ではちょうど宿屋にも着きましたので、私はここで。皆さんのお部屋は先生がご用意して下さったそうです」 「皆さん、ゆっくり休んでくださいね。それでは!」 ファムはそう言うと、来た道を引き返し、大学の方へと戻っていった。 エルヴィラ お身体の調子→あの方がかけてくれた術が正常に効いている 両親の師 いつか元気で会えるといいなー ◆ミドル⑨ キミたちが宿屋に入り店主に話をすると、エルヴィラが用意していたという部屋へと通される。何日も野宿が続いていたキミたちは、広々とした室内で休めるというだけでも快適さを感じていた。 「皆さん、本日もお疲れ様でした。今、お茶をご用意しますね」 この数日間の旅を通して、エイテルも自分に出来る仕事を探し、様々な雑用をこなしてくれるようになっていた。お茶汲みもまたその1つであった。エイテルは人数分のお茶を淹れ終えると、キミたち一人一人にそれを手渡していく。その場に流れる穏やかな雰囲気に、キミたちはほっと一息ついていた。 【PCに適当に会話してもらう】 キミたちがそんな会話を繰り広げていると、 「カン!カン!カン!カン!」 突如、街の警鐘の音が鳴り響く。 キミたちが外へと出ていくと 「妖魔だ!妖魔の大群が湖から攻めてきたぞー!!」 「街の中にも既にかなりの数が入り込んでやがる!一体どこから?!」 「非戦闘員は建物の中に入れ!戦闘員は街中の妖魔の駆逐と沿岸の防衛だ!!」 慌ただしく人々が行き交い、街中はかなりの混乱状態に陥っていた。 「皆さん、待って下さい。…おそらく敵の本隊は、あちらです」 エイテルはそう口にすると、エルクレスト・カレッジの方向を指差す。 「…私にもよくわかりませんが、街中に感じる人とは異質な者の気配が一番強いのはあちらの方角なので」 【行き先を選択】 沿岸/賢人の広場/神殿 ◆ミドル【沿岸】 キミたちが街の沿岸へと辿り着くと、波のように押し寄せる妖魔の大群と、それを湖へと押し戻そうとする傭兵たちが交戦している光景を目の当たりにする。妖魔たちのあまりの数の多さに、傭兵たちも圧されているようであり、このままではそう長くはもたなそうな戦局となっていた。 「ちっ…!エルクレスト・カレッジの魔道部隊はまだか?!」 「伝令は送っている!暫く凌いでいれば援軍も来るはずだ…!」 「果たして援軍はこちらに来れるでしょうか…?この戦局…おそらく援軍が来なければ街は…」 エイテルは戦場を見ながら物憂げな表情を浮かべる。 と、その時、傭兵たちがうち漏らした妖魔の一部がキミたちへと襲い掛かってきた…! 【戦闘】水魔demon A(「ウォーターエレメンタル」エネミーP93)lv4×2 Turn1経過後 → 水魔demon B(「ブルーマン」エネミーP86)lv5×2出現 Turn2経過後 → 水魔demon C(「ウォーターリーパー」エネミーP118)×2出現 うち漏らした妖魔を撃退し、キミたちが再び戦場を眺めると、先ほどよりも負傷している傭兵たちの数は増え、生存者の数も軒並み減っていくのがわかる。 「…このままでは…また、私は何も出来ずに…」 エイテルは涙を流し、その場に崩れ落ちる。 「…だめ…止めなきゃ…もう、やめて…!」 顔を伏せたままエイテルがそう口にすると、彼女の身体が突如光を放ち始める。光は天高く立ち上ぼり、その場にいた誰もがその光の柱を見上げ、戦いの手を止めていた。徐々にその光は薄れていき、光が完全に消えると、エイテルはその場に倒れ伏す。 キミたちがエイテルを連れ、その場を離れようと戦場を眺めると、今まで統率された動きで攻撃を仕掛けてきていた妖魔たちの中に、突如湖へと引き返す者が現れ、その場に残った者もそれまでのような連携は取れなくなっていた。 【次回、謝礼金8000G獲得】 ◆ミドル【賢人の広場】 キミたちがエルクレスト・カレッジを目指し進んで行くと、街の中央に位置する賢人の広場に辿り着く。広場の噴水は妖魔の手によって破壊され、付近の家屋にも荒らされた形跡が残っていた。すると、広場の中央付近に1人の傭兵が倒れていることにキミたちは気が付く。 「うぅ…お前たち、傭兵か…?」 「俺は、カレッジの魔道部隊に、援軍の要請をしに行く途中だったんだが…だめだ、カレッジには今、上級魔族が…ぐっ!」 「あれはおそらく…魅惑の水蛇、ディマーダ。西方の海域に住むと言われる海の悪魔だ」 「頼む、神具を…魔族に神具を渡すわけには、いかない」 「俺なら大丈夫だ…近くの家屋にでも隠れて少し休んだら、そっちに向かう」 キミたちは傭兵と別れ、エルクレスト・カレッジの正門へと向かった。 【行き先を選択】 大図書館/大型実験場/ゴーレム保管庫 ◆ミドル【神殿】 キミたちが街の北西部にある神殿へと向かうと、そこにはある種の異様な空気が流れ、街での戦闘が嘘かのようにしんと静まり返っていた。神殿の入り口では2人の聖騎士が見張りをしており、周囲には妖魔が数体倒れていた。 キミたちが神殿に近付き、騎士に声をかけようとすると 「…現在、この神殿は立入禁止区域となっている。それ以上近寄れば、貴殿を敵とみなし排除する」 「当神殿は緊急時において第一種立入禁止区域へと移行され、何人であろうとも神殿に立ち入ることは許されない。また、我々は緊急時に神殿へと立ち入ろうとする者を強制排除することが認められている。痛い目をみたくなければ、直ちにこの場より立ち去れ」 ◆ミドル【大型実験場】 キミたちがエルクレスト・カレッジの奥にある大型実験場へと向かうと、そこには巨大なドーム状の建物が建っていた。先日ファムに聞いたところによると、この建物はラーフ大洞窟から建築家を呼んで造らせた物であるらしく、中は広大なグラウンドとなっており、普段は学生が新しい魔法の使用や、召喚魔法などの大がかりな魔法の実習、人造生物の性能テストなどに使用しているとのことであった。キミたちはそのドームの入り口前に歩み寄る。 【入場】→奇襲攻撃 ※ 聞き耳の使用可能 【戦闘】人造生物creature A(「バルーンスライム」エネミーP100)×2 Turn1経過後 → 人造生物creature B(「ミラージュフォッグ」エネミーP101)出現 キミたちが襲い掛かってきたモンスターに気を取られていると、実験場の中から新たなモンスターが出現する。実験場の中を覗いてみると、まだまだ多くのモンスターが控えており、このままだと際限なくモンスターと戦う羽目になりそうであった。その時、エイテルが実験場の入り口へと駆け寄っていくのがキミたちの目に映る。彼女は重い扉を1人で閉じ、扉を守るようにその場に立ちはだかった。 「皆さん!この扉は私が押さえていますから、その間にそのモンスターを…!」 【戦闘再開】 キミたちが戦いを終えると、エイテルはキミたちの方へと駆け寄ってくる。 「皆さん、大丈夫ですか?!」 「どうやら中のモンスターたちはあの扉を閉めておけば襲ってこないみたいです。今のうちに別の場所へ移動しましょう」 ◆ミドル【ゴーレム保管庫】 キミたちがゴーレム保管庫へと向かうと、突如地鳴りと共に爆発音が鳴り響き、保管庫が火の手をあげる。煙を上げ、燃え落ちる保管庫の中から鋭い目つきをしたゴーレムが現れ、キミたちに襲い掛かってきた…! 【戦闘】ゴーレムgolem(「メタルビースト」エネミーP111) 戦闘後、保管庫を調査 → リムブースト・リフレクス(アイテムP128)入手 ◆ミドル【大図書館】 キミたちが大図書館の中に足を踏み入れると、日中キミたちが目にした光景は見る影もなく、内部は荒れ果てていた。 「…気配を強く感じるのはこの奥です」 エイテルはそう口にすると、図書館の奥へと向かっていく。 エイテルの後に付き奥へと進んでいくと、キミたちは星の館へと辿り着いた。 【精神判定:達成値15】 成功→辺りの様子を見回していると、キミはあることに気が付く。床の一部に魔術による偽装が施されており、そこには地下へと続く階段のようなものが見えた。どうやら他の人たちはその階段の存在に気付いていない様子であったが、ナミキだけはその階段の先に何が保管されたのかを知っていた。 【達成したPCは経験値10獲得】 失敗→キミたちが辺りの様子を見回していると、エイテルがゆっくりと歩を進め、部屋の中央で立ち止まる。 「ここに階段があります」 エイテルはそう言うと、床の下へと姿を消していく。何が起こったのかわからずキミたちが困惑する中、ナミキだけはこの先に何が保管されたのかを知っていた。 ◇クライマックスフェイズ ◆クライマックス1 キミたちが先へと進むと、階段は螺旋を描きながら地下深くへと続いていく。人二人並んで歩くのがやっとという幅の狭い階段には燭台が等間隔に設置されており、一定の明るさが常に保たれていた。10分程度は歩き続けただろうかという頃、キミたちは遂に広い空間へと出てくる。すると… 「先生っ…!」 ファムの声がその場に響き渡り、事態の緊迫した雰囲気が伝わってくる。 「ファムリシアさん、早くお逃げなさい。私が時間を稼ぎます」 「で、でも、私のせいで先生も怪我を…」 キミたちが階段の上から状況を確認すると、エルヴィラとファムリシアが敵と対峙しており、エルヴィラは片腕から血を流しながらもファムリシアを背に交戦しているようであった。 「惜しかったわね。後ろのその子がいなければ、私ともいい勝負になったでしょうに。…さぁ、教えてもらいましょうか?"曙と暁を知る者"…現世の適合者の居場所を」 女人の上半身と大蛇の下半身をもったその魔族は、そう口にすると次の攻撃体勢へと入る。 「貴女たちだって、これ以上多くの犠牲は望まないでしょう?あれのために一体今まで何万の人間の命が犠牲になったかしら?真実から目を背け続ける神の子にとって、あれは争いの火種にしかならない。早々に見限るべきだったのよ」 黙り込み相手の出方を窺っていたエルヴィラがゆっくりと口を開く。 「…確かに、これまで彼の者を巡り多くの血が流されてきました。ですが、私たち管理者(オブザーバー)は一度たりとも彼の者の意志に疑念を抱いたことはありません。星と、この世界と対話することの重責を、私たちは彼の者に委ねたのですから」 「そう…管理者なんてやはり愚かなものね。もういいわ。他者に不条理な重責を押し付けるだけの貴女たち管理者は今ここで排除しましょう…!」 【PCに適当に登場してもらう】 【戦闘】魅惑の水蛇 ディマーダ lv8 ◇エンディングフェイズ ◆エンディング1 キミたちは死力を尽くし、上位魔族であるディマーダとの激闘を繰り広げる。しかし、その圧倒的な力の前にキミたちは劣勢を強いられ、既に体力の限界を迎えていた。 「ふふっ。思いの外、骨のある子達だと思ったら、貴方たちなかなかに面白いわね。…いいわ。この場は退いてあげる。貴方たちが今後どういう結末を迎えるかはとても興味深いもの。絶望に押し潰されるか、それとも僅かに見出だした希望にすがり付くのか…楽しみにしていましょう。それじゃあ、また近いうちに会いましょう」 ディマーダはそう告げると、霧の中へと包まれていき、その姿を消した。
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ジョジョの奇妙な東方 ~FF・of・fate~ 第三話:烏と犬の?騒ぎ その2 文が持って来た「いらない人間」は確かに毒を持ってそうだった。電波的な意味で。 「お、オレのそばに近寄るなああーッ!ドッピオー!私のドッピオー!助けてドッピオー!」 「…確かにあんまりオトモダチになりたくないタイプだーね…」 「そういう台詞は私を盾にして震えながら言わないほうがいいぞにとり。」 「だって怖いじゃん。なんか噛みつきそうで。」 身体半分を水に浸からせ、自分の腰にすがってガタガタと震えているにとりを溜め息混じりに見た後、FFは文の方を向いた。 「ところで文。コイツは毒とか本当に持ってないんだな?」 「それはコイツを縛った私が保証します。」 文ではなく、椛が応える。ところどころ傷がついているのはこの男が暴れたからだろうか。 「だ、そうです。さ、ちゃちゃっとコイツを濡らして中に入っちゃって下さいなFFさん!」 「そういう言い方しないでくれるか…?何か放送コードとかに引っ掛かりそうだ。」 まだ四人しか会っていないが、幻想郷の生き物はこんなんしかいないんだろうか…。FFは溜め息をつきながらも、ザバザバと男に水をかけていく。 「な、何だッ!?オレはどんな【殺されかた】をするんだッ!?」 「あー、すまんが私が生きるためだ。恨むんなら私を恨めよ。出来る限り痛くはしないから。」 「え!?おい、俺にはそんな趣味…アッー!?」 今日のディアボロ FFに取り込まれる際に×××を○○○されたショックで死亡。本人曰く、「今までで一番イヤな死に方」。 「ふぅ。こんなもんか……ん?」 融合を終え、身体の調子を確かめるFFを何故かにとりと文が頬を赤らめて見ている。椛に至ってはどこから取り出したのか画用紙にスケッチまでしている。 「なんだ?人間を喰う光景なんて珍しくも何ともないだろう?」 「珍しくはないけど…それでも…そんな激しい食べ方なんて…あぅ…」 にとりが真っ赤になって倒れた。下流に流されて行ったが気にしないでおこう。 「面白ければ記事にしようと思ってましたが……こんなん記事にしたら恥ずかしすぎて配れないわ!」 文がメモ帳を地面に叩き付けて顔を真っ赤にしている。そんなに刺激が強かったのだろうか?まぁどうでもいい。 「にしても…馴染まねぇー」 多少は違和感があるだろうとは思っていたが、ここまで馴染まないとは思っていなかった。 「馴染まねぇ…実に馴染まねぇ…」 頭を抱えるFF。これではにとりを相手に戦っても負けてしまうだろう。今までエートロという女性の身体を使っていたせいなのか、それともこの身体が特別なのか… 「ん?どうしたんですか?何か変?」 「変、で済めばよかったんだが…」 仕方がない。本来は死ぬほど痛いのであまりやりたくはなかったが、この身体を改造することにしよう。 「ちぃッとこの身体を削って組み直す。さっきより多分、刺激が強いだろうから後ろ向いたほうがいいぞ。」 「え、ちょっ!?あれより凄いって…」 何やら真っ赤になって慌てている文をほっといて、河の中央へザバザバと入っていく。どっかの刑務所の湖と違って水が綺麗そのものだ。ワニもいないし。 「…さて、やるか…」 静かに深呼吸をして息を整える。富胸程度なら大して問題はないのだが、身体全体となると文字通り骨だ。 ゆっくりと身体の構造を考えながら骨といらない所を削る。 「ッく……あぅッ……くぉッ」 言葉だけ聞くと卑猥極まりないが、あくまで肉体改造である。 「…ふぅ……あンッ……こ…ここは…いらないか……あぁッ!」 くどいようだが、あくまで肉体改造である。 たっぷり三十分かけ、肉体を変える事には成功した。 毒々しかった髪は淡いグリーンになり、上半身丸見えだった服もグレーのつなぎに変化していた。蛇を連想させる冷徹そうな顔もFFらしい爽やかなものへと変わっている。 本来の「エートロ」と違う点は、背が高くなったのと、手足が多少細くなったくらいか。 「こんなもんか?かなり違和感は取れたか…ん?」 肉体改造を終え、身体の調子を確かめながら河からあがったFFはスケッチ中の椛しかいないことに気が付いた。 「ん?文はどうした?」 「文様ならさっき、凄いスピードで森の中へ行っちゃいましたが。」 スケッチを終えた椛が剣で森の中を指す。トイレだろうか? 「まぁいいさ。それより、私が此処に来た訳を知らないとな。」 「訳…?」 下流に流されていたにとりが聞く。やっと戻って来たようだ。 「取り敢えず鼻血を拭け、にとり。私は本当なら、人の記憶が書かれた【DISC】がないと存在出来ないはずなんだ。」 にとりの鼻血を水で洗ってやりながら説明する。FFは本来、DISCによって知性を与えられたプランクトンである。 DISCはある意味、水以上に必要なもののはずだった。 それがない。当たり前だ。神父に取られたのだから。しかし、FFが存在している。一体何故? もし、答えがFFの予想通りだとするなら、極めて厄介な事になる。 「幻想郷に住む人間」では絶対に「対処できない」厄介事だ。 「スタンド使いは引かれ合う……スタンドにおけるルールさ。」 そして、もう一つ考えられる理由。 「ハッキリと思い出した。やっぱり私は死んだはずだ。あの時、確かに。」 徐倫に確かにサヨナラを言ったはずなのだ。となると、今の「自分」は何なのだろうか? やはり「死後の世界」であることが否定できない。 「それなら打って付けの場所がありますよ!二ヶ所ほど。」 森から文の声が聞こえてきた。が、姿が見えない。戻って来る最中なのだろう。 「白玉楼っていうお屋敷と、無縁塚って場所なんですけど、死人に関してはどちらもプロの方がいらっしゃいます。」 「そうか!済まないが道案内を頼む…前にお前も河に入ってこい。洗ってやる」 「え?何か変ですか?私。」 「あぁ。コーラ飲んだらゲップが出るってぐらい確実に、な。」 元気一杯に姿を見せた文の顔の下半分と服が鼻血で真っ赤になっていた。FFはここに来て何度目になるかわからない溜め息をついた。しかし彼女自身、面白くも感じていた。 (こんなにも能力者が多いのに平和な世界…徐倫やエルメェスが見たらどう思うだろうか) FFの口元に自然と笑みがこぼれていた。 前へ 目次へ 続き
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翠「蒼星石ぃぃぃ、待ってですぅ!」 翠星石はひたすら蒼星石の後を追いかける。 蒼「ほら、急がないと♪」 その前方で走っている蒼星石。 翠星石のペースにあわせるため、彼女にしてはゆっくりと走る。 そして一つ突っ込みたい……。珍しく蒼星石が明るい。 翠「でももう疲れたですぅ、すこし休むです!」 完璧にバテている翠星石。蒼星石に休憩を催促する。 蒼「でも休んでいられないんだよ」 翠「うぅ……」 二人は後ろを振り返る。 遠くか近くか判らないところから呻き声が聞こえる。 だんだんと近づいてきているようだ。 蒼「……走ろうか♪」 翠「そうですね……」 二人は大して恐怖を感じていなかった。 ただ、捕まるのがなんとなくいやなので逃げていた。 というかその状況で蒼星石はなぜ明るいのか……。 蒼「なんでだろうね♪でも楽しいんだよ♪」 ……ナレーションに返事しないでほしいな……。 翠「そもそもなんで追いかけられてるんですか?」 蒼「……なんでだろう」 どうやら追いかけられている理由は知らないようだ。 蒼「この間のストーカーさん達かな?」 翠「刑務所を抜け出してきたですか?」 (ここから回想始まる) 最近彼女達はストーカー軍団に付き纏われていた。 キレた二人は軍団をフルボッコにした。 そしてストーカー軍団が連れて行かれた先は病院ではなく警察。 梅「梅岡刑事だよ。リーダーだけちょっと来てね。あとは刑務所行き」 生活安全科の梅岡刑事はリーダー格のM字ハゲの襟首をつかんだ。 リーダー格は他のメンバーと違う場所に連れて行かれた。 ベ「これからが本当の(ry」 リーダーの声が木霊する。 (回想おわり) 蒼「……刑務所は出られないよね……」 翠「ですね……」 呻き声が近くなる。どうやら回想している間に近づいたようだ。 蒼「とりあえず逃げよう」 翠「なんかキモいですからね……」 二人は走り出した。 蒼「にしても……普段運動不足な翠星石を走らせるのって……♪」 どうやら蒼星石が楽しい理由はここに在ったらしい……。 翠「そ……蒼星石はとんだサドですっ!佐渡島です!!」 翠星石…… orz そのころ、水銀燈は夜空を漆黒の翼で飛んでいた。 銀「う~ん……なんか魔物の気配がしたんだけどぉ……」 彼女は知らないが、実は音珠を通じて魔物の気配が彼女に伝わってくるのだ。 それを彼女は『私も成長したのねぇ?』とか想っているらしい。 音珠の努力はこうして今日も無に帰しているのだった。 銀「あらぁ? あれは翠星石と蒼星石じゃなぁい?」 彼女の目線のその先、地上で走っている双子が見えていた。 後ろを気にしながら走っているが、後ろには何も確認できない。 銀「……また誰かを刑務所送りにしたらぁ……私も困るしぃ……」 独り言で理由を呟きながら降下する水銀燈。 ちょいと急降下しすぎて低空飛行していた鳥にぶつかった。 銀「あらぁ……危ないわねぇ……」 ……ように見せかけて、さりげなく鳥をキャッチしていた。 降下を止める水銀燈。眼は手元の鳥に向けられている。 その鳥は彼女と同じ漆黒の羽を持っていた。 銀「あらぁ……カラスぅ?」 水銀燈は手元の鳥にに話しかけた。 銀「あなたぁ……私に似てるわねぇ……」 どうやら親近感が沸いてきたようだ……。 なぜかは知らないが、潤んだ目で水銀燈を見つめる鳥。 彼は今、心の中でこう叫んでいる……。 鳥「……(いや……鵜なんですけど……)」 水銀燈は暗闇にただ一羽飛ぶ烏を逃がしてやろうとした。 しかし鳥は彼女の元を離れようとしない。 急降下を再開した彼女と一緒に降りていた。 銀「なにぃ?情でもわいちゃったのぉ?」 鵜は潤んだ瞳で水銀燈を見つめる。 銀「おばかさぁん」 水銀燈は空中で立ち止まる。そして左腕を水平に伸ばす。 鵜はそこに止まった。 ……というかなんでこの鵜は飛んでいる水銀燈に恐怖を覚えない。 それ以前に市内になぜ鵜が飛んでいる? カラスだと思っている水銀燈にそんな疑問が沸くわけは無い。 水銀燈は鵜に話しかける。 銀「私と来ても食扶持は保障しないわよぉ?」 鵜は首をかしげる。 さりげなく憂いに満ちた顔をしている。 銀「『なんで?』って顔ねぇ……私は動物の世話は苦手よぉ?」 それ以前に薔薇乙女で動物の世話にむいているのは蒼星石しか居ない。 ちなみに、翠星石は一見大丈夫そうに見えて実は植物専門だ。 銀「私に飼われると不幸になるわよぉ?」 鵜は首を横に振った。 銀「?……あなたぁ……人の言うことがわかるのぉ?」 鵜は、今度は頷いた。 銀「……フフフフフフフフ……おかしなカラスも居たのもねぇ」 鵜「……(だから……鵜なんですけど……)」 烏……もとい、鵜の気持ちは水銀燈には伝わらない。 銀「……じゃぁ私といらっしゃぁい♪ カラスさん♪」 鵜「(一応期待に沿ってカラスになっとこう……)……カァァ……」 鵜よ……お前は大人だな……。 翠「ゼェ……ゼェ……もう歩けんです……」 翠星石は壁に手をかけ、肩で息をしている。 蒼「……本当に運動不足じゃない? マズイよそれ……」 一方蒼星石は軽く息を弾ませている。 一応翠星石の名誉のために言うと、彼女らは既に10kmは走っている。 常人ならば疲れて当たり前。もう走ろうとも思わないだろう。 蒼星石がおかしいのだと思う。 蒼「君も翠星石も……へタレだね……」 溜息交じりに蒼星石が言う。 翠「『君も翠星石も』?誰に話しかけてるですか?」 蒼「いや、言葉のあやだよ」 蒼星石の言葉に違和感を感じ質問する翠星石。 それを冷や汗交じりで避ける蒼星石。 だからナレーターに返事をするなとあれほど……。 翠「う~ん、よくわからんですが、まぁいいです」 何故か今ので納得できた翠星石。 とりあえず蒼星石はナレーターに答えるのを控えてほしい。 蒼「(ボソッ)だって聞こえるんだからしかたないじゃないか……」 そうこうしている間にも音はどんどん近づいてきていた。 蒼「まずいね」 翠「まずくは無いです。もう体力は回復したですよ?」 いや、早すぎだよ翠星石。 蒼「じゃぁ走れるね♪」 翠「いやそれは……(うぅ……墓穴を掘ったですぅ)」 走るのがいやな翠星石。 走りたい蒼星石。 双子でもここまで違うものなのだろうか……。 翠「やっぱりまだ……はい?」 急に会話を止めて翠星石は固まった。 蒼「ん?……あれ?」 蒼星石も違和感を感じたようだ。 何かの気配が近場に現れている。 それも気づかないうちにだ。 蒼「まさか声の主?」 翠「うぅぅ……さすがに不気味ですぅ……」 あたりを見回す蒼星石とビビりながら小さく身構える翠星石。 その時、物陰からものすごい勢いで何かが飛び出した。 翠「ひぃぃぃ!!!??」 蒼「くっ!?」 翠星石と蒼星石は黒い影と対峙している。 蒼「く……来るなら……来い!!」 庭師の鋏を取り出した蒼星石。 翠「うぅぅぅ……」 その後ろで縮こまりながら如雨露を構える翠星石。 ふいにその時、雲が晴れた。 月明かりに映し出されたその姿に二人が驚く。 「「ば……薔薇水晶!?」」 薔「うぃ……」 右親指を立てて挨拶する薔薇水晶。 刹那、如雨露の一撃が薔薇水晶の頭を直撃する。 翠「てめぇは何人を驚かしてやがるですか!!」 薔「……痛い……」 抑揚のない声で返した薔薇水晶だが、うずくまって頭を押さえている。 明らかにクリーンヒットして痛がっている。 蒼「翠星石、やりすぎだよ! 薔薇水晶、立てる?」 なみだ目になっている薔薇水晶を起こす蒼星石。 翠「で、何しにきたですか?」 薔「あ、そうだった。これを渡しに……」 薔薇水晶はポーチの中から青い光を放つ珠を取り出した。 薔「これは……蒼星石の……音珠……」 蒼「オンギョク?なんの話だ……い!?」 薔薇水晶が音珠をかざす、そこから波動が出る。 それは翠星石と蒼星石にあたると消え去った。 翠「……なるほど……納得ですぅ」 蒼「これがボクの武器なわけだね」 青い音珠、レンピカが持つ特殊能力。 それは人に『心の映像を見せる』能力。 使用者が伝えたいことを思い描き、それを音珠に送り込む。 レンピカはそれを幻覚として相手に送り込む。 相手はそれを『理解』し『納得』する。 また、それを逆ベクトルで使えば相手の心を読むことも出来る。 薔薇水晶は今のところ判っている魔物の知識や音珠のこと等を送った。 レンピカを蒼星石に渡す薔薇水晶。 蒼「そうか……これがボクの武器なのか……」 翠「……ってちょっとまつです。翠星石の武器はないのですか?」 翠星石も先程の幻覚を受信している。 彼女は自分にも音珠があるはずということに気がついた。 薔「お父様が……調整中」 そう、翠星石の音珠・スイドリームは現在槐が調整中なのだ。 今の自分は戦えない。調整が終わるまで戦えない。 翠星石はあせりを覚えた。 銀「調整ってぇ……どのくらいかかるのぉ?」 空から突如水銀燈が舞い降りて会話に混ざった。 蒼「うわぁ、びっくりした」 翠「水銀燈、脅かすなですぅ!!!」 薔「大体2~3日」 驚く双子といつもどおり平然と会話を続ける薔薇水晶。 蒼「って、薔薇水晶。なんで君は驚かないんだい?」 薔「驚く?……!銀ちゃん……いつのまに?」 どうやら水銀燈がきたことには気づかず、会話への返事は脊髄反射らしい。 銀「バラスィー orz」 翠「ところで水銀燈、エルボーの上に乗せてるそれはなんですか?」 ここでようやく翠星石が水銀燈の肩に乗っている連れに気がついたようだ。 蒼「……(って、肩はショルダーだしwwwwwwwww)」 蒼星石のつっこみは翠星石には聞こえていない。 銀「見て判らなぁい?私の新しいペットよぉ?」 翠「いや、そんなことは判ってるです。なんて種類か聞いてるんです!」 ごもっとも。 薔「あ……私知って……」 銀「・・・カラスよぉ、見れば判るでしょぉ?」 水銀燈は未だにこの鳥をカラスだと思い込んでいるらしい。 蒼「……(絶対違う)」 真っ向から否定する蒼星石。いや、否定も何もね……。 薔「……(……鵜なのに……)」 発言を途中でかき消された薔薇水晶。 鵜「(……期待に沿わねば)……カー」 銀「ほらねぇ?」 大人な鵜と空気が読めない水銀燈。 おもわずふきだしている薔薇水晶。 そしてふいにPCを取り出す蒼星石。 蒼「良ネタだwwwwwうぇwwwwwwww」 その日、VIPにはこんなタイトルのスレが立った。 【大人な鳥】黒い鳥をカラスだと思い込むギタリスト【子供なあいつ】 まぁ、中身はご想像にお任せする。 薔「銀ちゃん……その子……霊力が強い……」 突然明後日の方向に話を進める薔薇水晶。 翠「いきなりオカルティズムなことを言うなです!」 蒼「でも意外に幽霊鳥だったりしてwww」 翠「い……いらんこというなです!!」 相変わらず怖いものが苦手な翠星石をからかう蒼星石。 そんななか一人だけさめている水銀燈が口を開く。 銀「音撃関連なのぉ?」 その一言で場が静まり返る。 薔「……うん……。これは音式神の……原型の……生き残り」 翠「オンシキガミ?なんですか?その陰陽師に出てきそうな名前は」 薔「音式神は……こういうもの」 薔薇水晶は懐からディスクを取り出す。 それを擬似音珠に当てると、ディスクは鷹に変形した。 全員「おぉ!!」 薔「これが音式神。そのu……じゃなくてカラスは原型の末裔」 あくまで鵜ではなくカラスといわなくてはいけないのか・・・。 薔「ところで……」 翠「どうしたですか?」 薔「……カラスの鳴き声って……アホーじゃないの?」 全員「……え?」 薔薇水晶が突然電波を出し始めた。 しかしそれを電波と思えなかった奴がいた。 鵜「(……もうやけくそだ!)……アホー」 薔「……(かかった。ニヤリッ)」 あぁ、電波を電波と見抜けない奴に(ry (以下執筆継続中) 第二話へ戻る/長編SS保管庫へ